大曽根の夜はとっくに明けていた|徳川園「黒門てづくり市」で見た観光バス満車の衝撃

2026-05-25

大曽根の夜はとっくに明けていた。

知らなかったのは、僕ら地元民だけだったのかもしれない。

初夏の徳川園で黒門てづくり市へ

5月24日。徳川園で「黒門てづくり市」が開かれた。

初夏の爽やかな風に包まれて僕は、商店街から坂を上る。

黒門を抜けると、36の屋台が並んでいた。

アクセサリー、服、カバン、木工品、革細工、コーヒー、和菓子、焼き菓子。

「てづくり市」の名前の通り、どれもお店の方の心がこもった品ばかりだ。

大きなイベントというより、小さなお店がそれぞれ自分の手で作ったものを持ち寄っている感じ。

小粒だけど、大曽根らしく温かみがある。

木のスマホスピーカーに出会う

僕が気になったのは木工品だった。

スマホを立てると、スピーカーのように音が出るというもの。

10センチ四方くらいのキューブ型で、スマホを立てる溝と音を響かせるすり鉢状の窪みがあいている。

お店の方に話を聞くと、旦那様が木を削って塗料を塗り、奥様が最後にネコの飾りをつけて完成させるのだという。

いい。

もう、その作り方がいい。

試しにスマホを乗せて音楽を鳴らしてみた。

これが全然違う。

スマホから直接鳴らすより音に深みが出る。木の中で音が少しふくらむ感じがした。

僕は夜中にイヤホンをつけて音楽やラジオを聴いている。

その時、後ろに妻が立っていることに気づかず、「ウォーー!」と驚きの声をあげてしまうことがしばしばある。

イヤホンなしで深みのある音も楽しめるなら、これはいいかもしれない。

そう思って買ってみた。

冷たいシュークリームと手づくりの温度

お次は、少し小腹がすいてきたので甘いものを探した。

目の前には冷たいシュークリームのお店があった。

「暑い日には冷たいシュークリームがぴったりですよ」

お店の方にそう言われた。そんなこと言われたら頼むでしょ(笑)

サクッと香ばしいシュー生地。中には甘さ控えめで爽やかなクリームがたっぷり入っている。

「朝にクリームを詰めて湿気らせないようにしています」と美味しさの秘密を教えてくれた。

ただ売っているだけではない。ちゃんと美味しく食べてもらうための工夫がある。

木工品もシュークリームも、作っている人の顔が見える。こういうところが、てづくり市の面白さなんだろう。

僕はベンチに座り、シュークリームとアイスコーヒーをいただいていた。

初夏の風が気持ちいい。徳川園の緑もきれいだ。冷たいシュークリームもうまい。

今日はいい日だな。

そんなことを思っていた。

名古屋で立ち寄る場所が大曽根ですか?

その時だった。

僕の目の前を、団体が通り過ぎていった。

旗を持ったガイドの方を先頭に、そろいのバッジをつけた人たちが奥からついてくる。

観光客だ。

徳川園だから、観光客がいても何もおかしくない。おかしくないのだけれど、僕の中で少し引っかかった。

バッジをつけた女性が僕の隣に座った。せっかくなのでお話をうかがってみた。

その方は80歳。船の旅で埼玉の越谷から来たのだという。

東京を出発して名古屋や新潟、九州、北海道に立ち寄って戻る旅。

その途中で名古屋に寄った。そして、徳川園に来た。

つまり、大曽根に来た。

えっ?

名古屋で立ち寄る場所が大曽根ですか?

マジで??

名古屋には名所はいくらでもあるのに

この地方には伊勢神宮もある。熱田神宮もある。犬山城もある。

名古屋観光なら、もっと名前の通った場所はいくらでもある。

もちろん徳川園が素敵な場所であることは間違いない。尾張徳川家ゆかりの庭園で、緑も美しい。

観光地として選ばれる理由は、ちゃんとある。

それはわかる。

それでも、地元民としては驚いてしまう。

数ある名所の中で大曽根に人が来る。しかも、船旅の途中で立ち寄る。

まるで、窓際平社員の僕が会社を代表して挨拶するようなものだ。いや、さすがに大曽根に失礼か(笑)

観光バスはすでに満車だった

気になって奥の駐車場に行ってみた。

4台駐められる観光バスの駐車場は、すでに満車だった。

その中には台湾の学校だと書かれたバスもあった。

衝撃の事実。

大曽根は、すでに観光地だった。

僕は20年以上前から大曽根は「夜明け前」だと思っていた。

これから面白くなる街。これから見つかっていく街。まだまだ知られていない街なんだと。

ところが、目の前には観光バスが並んでいる。ガイドさんに連れられた団体が歩いている。埼玉から来た80歳の女性が、徳川園のベンチに座っている。

夜明け前どころではなかった。

大曽根は冥土の土産になる街なのか

お話をうかがった80歳の女性は、笑いながらこう言っていた。

「人生最後の旅行になるよ」

大曽根は果たして、冥土の土産に楽しんでもらえる街なのか。

派手な観光地ではない。歩けば有名スポットが次々出てくるような街でもない。

それでも、観光バスは満車だった。遠くから来た人たちが、ガイドさんについて徳川園を歩いていた。

これは、かなりすごいことなんじゃないか。

遊びに行くだけのつもりだった徳川園の黒門てづくり市。

木のスマホスピーカーを買い、冷たいシュークリームを食べ、観光バスの列を見た。

大曽根の夜は明けていた。

◆大曽根を楽しもう!大曽根でやりたい7つのこと|散歩・観光・カフェ・昼飲みまで歩いて楽しむ街案内!

大曽根探検のよく読まれている記事
最新記事