
毎月第2・3金曜日に大曽根商店街の「喫茶はじまり」で開かれる己書の幸座(講座)。
この日は、11月半ばから始まる展覧会に向けて、ちょっと早めにクリスマスのお題に挑戦することに。
サンタさん、静かな針葉樹林、もみの木…とにかく年末を明るく彩ってくれる題材ばかりを選んで描いてみた。
生徒さんも増えてきた
大曽根の幸座は生徒さんが着実に増えているらしく、今回も新しい方が筆をとりにきていた。
先生はその方に向かって、いつものように情熱全開。
「いいよ!すごくいいよ!」
声は熱いけど、響きはやさしい。ほんとに不思議な先生だ。
「千回描いたか?」
その先生がちょっと面白い話をしてくれた。
先生が総師範から教えを受けていた時のこと。どうしても苦手な形があって、思い切って相談してみたら、総師範はこう言ったそうだ。
「千回描いたのか?」
…先生、ぐうの音も出ず。
いつも鮮やかな筆さばきを見せる先生にも、そんな苦手があったことに驚いたし、なにより“総師範クラスの人は、千回ぐらいは当たり前に練習している”って事実にびっくりした。
そりゃ上手くなるわけだ。千回。
僕もやらなきゃな。数回失敗したぐらいで「ムリ!」って投げてたら、そりゃ上達しないよね。
この学び、先生には内緒にしておこうっと。
青海波(せいがいは)の魔法

己書の幸座は毎回「発見」があるから面白い。
今回の収穫は、心に刺さる色を生み出す一本の筆。
その名も「青海波(せいがいは)」。己書限定で作られた特別な筆で、名前の通り「穏やかな波」を思わせる青が入っている。
この筆で線を引くと、濃紺っぽい色が出てくる。
それを水でにじませると、一気に表情が変わるんだ。深い青、淡い青、黒…と、複雑な色合いが紙の上に広がっていく。

サンタさんの周りをこの青でにじませていたら、深海みたいでもあり、真っ青な空みたいでもあり、ちょっと曇り空にも見える。水の動き次第でコントロール不能。でもそこが最高!
透き通った青が浮かび上がった瞬間は鳥肌モノだし、逆にくすんだ色になっても、その部分が他の青を際立たせてくれる。
つまり、どんな結果でも「いい色」にしかならない。完全に魔法の筆。
決めた。この筆は買う!
タイムアップ、そしてコピックへ

青の世界に夢中になっているうちに、「あ、もう2時間!?」。サンタさんの赤い服を塗れないままタイムアップ。
時間を忘れて夢中になってしまうのは僕の悪いクセ。
「まあいいや、家で続きをやろう」
そう思って、赤い部分は別の画材に挑戦してみることにした。水彩じゃなく、あえてコピックを使ってみたんだ。

ムラのないコピックの塗り味と、水彩のグラデーションが混ざると、なんとも言えないポップさと空気感が出てきた。
これはこれで新しい発見。

己書の心髄
「心のおもむくまま、楽しんで描くのが己書なんだよ」
先生がいつもそう言っていたけど、本当にその通り。
己書って、なんて贅沢な遊びなんだろう。
こんな楽しみを教えてくれる先生には、感謝しかない。ありがとう!!