
あれ、知らないやつがいた。
大曽根にほど近いとあるスーパーの日本酒売り場。見慣れない金虎の小瓶が置いてあった。
「生貯蔵酒」。
透明な瓶に白いラベル。そこには、墨で描かれた力強い虎がいた。
睨みをきかす虎の姿。この力強さ、惚れた。
金虎のお酒はたいがい知ってると思っていた。でも甘かったね。「そこの店にしか置いてない」。そんなお酒がまだまだたくさんあるんだ。
世界は広い。意外と大曽根も広い。油断してた僕の負けだ。
もちろん、こいつを一つカゴに入れ、家に連れて帰ることにした。
日本酒のど真ん中

あらためてラベルをじっくりと眺める。
金虎らしい、いかにも日本酒っぽく力強いデザインがいいじゃないか。
こういう“ど真ん中”に弱いんだよ。
栓を開けた。米のふくよかな香りが抑えめに感じられた。

グラスに注ぐ。
少し黄色みがかかった美味しい日本酒によくある色合いがあらわれた。
この色、安心するやつ。期待ふくらむ。

一口、グビリ。
唎酒師的に言えば、爽酒の分類に入る。とても爽やかでフレッシュ。それでいて、後味にはしっかりと米の旨みを感じる。
入り口はとても軽やかで入りやすいけど、出口に向かうころには本格的な味わいに魅了されてるんだよね。
僕は一瞬で金虎生貯蔵酒のトリコになった。
脳内、夏の港町が再生される

僕の心は一瞬で、夏の港町に飛んでいた。
日差しは強いけど海風が涼しく、波の音はどこまでも穏やか。
蝉時雨の中、冷蔵庫から取り出したのは透明の小瓶。そう金虎の生貯蔵酒。
グビッと飲む。爽快な味を楽しみながら空を見上げると、カモメが飛んでいた。
そんなイメージが妄想好きな僕の脳内で再生されたんだ。(BGMはサザンの「TSUNAMI」でお願いします)
小さく叫ぶ:これ、源流じゃない?

「もしかしたら金虎の源流はこんな味なのかも」
金虎というと純米や本丸御殿だったり名古屋城とかが有名だよね。
でも、これらのお酒はこだわりを求めるマニアのためって感じがするんだ。香りや味のパラメーターを思いっきり振り切って、通をうならせるために作られたお酒。
でも本当は、毎日飲んでも飲み飽きない味も香りもど真ん中の「ザ金虎」が存在するんじゃないか?
“普段着の最強”って、絶対あるはずだ。
例のアレ:地味最強理論(上撰の法則)

例えば、大手の月桂冠や松竹梅、白鶴とかで一番売れてるのは、昔からある目立たない「上撰」という名前のお酒だったりするように。
そんな地味なお酒が実は、飲みやすくて味わいも豊かだったりするんだよね。しかも、売れてるから安い。
地味=弱い、じゃない。むしろ日常では無双。
大曽根民の義務:「ザ金虎」を探せ
果たして「ザ金虎」は存在するのか?
大曽根民として、解明する必要がありそうだ。
――調査、開始。次も探す。飲む。飲む。飲む(笑)報告を待っててほしい!