
机の上で叫びそうになった。
「描きたい!どうしても、あの絵が描きたい!」
理由はシンプルだ。
去年観た映画『THE FIRST SLAM DUNK』で、宮城リョータの躍動感に心を撃ち抜かれたから。
あのシーンが、今も頭の中でスローモーション再生され続けている。

家には、映画制作の裏側が詰まった本『THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE』がある。
ページをめくるたび、あの感動がよみがえる。
見ているだけじゃ耐えられなくなった。
――描くしかない。
キスラー先生の教え

少し前に読んだ「たった30日で『プロ級の絵』が楽しみながら描けるようになる本」の最後で、著者のキスラー先生がこう語っていた。
「模写やトレースで描き方を学ぶことの大切さは、いくら強調してもしすぎることはありません」
ダビンチやミケランジェロも、師の絵を何度も模写して学んだという。
この言葉が頭に残っていた。
27回の失敗リョータ

僕はまず、フリーハンドで模写を始めた。
……そして、下手くそなリョータを27体量産した。

「おまえら、誰なんだ(笑)」

なぜか毎回、目が大きく、顔が同じ方向に歪んでいる。

まるで「オレ今日、歯医者行ってきたんだ…」とでも言いたげな顔だ。
悪癖だとわかっても、直せない。
正直、泣ける。
トレースで見えた世界
そこで、トレースに切り替えた。
やり方はこうだ。
- デジカメで原画を撮影
- イラストレーターに取り込んで6×6のグリッドを重ねる
- スケッチブックにも同じグリッドを書き、線を追っていく
出来上がった瞬間、僕は声を漏らした。

「ワオ!」
段違いにかっこいいリョータがそこにいた。
トレースだから当然なんだけど、それでも興奮した。
少し整ったリョータ

この位置感覚を忘れないうちに、今度はグリッドなしで模写してみた。
すると、あの落書き感が少し消えて、顔が整ってきた。
さらに中心線だけのグリッドで描いても、そこそこ正確になっていた。

キスラー先生の言葉が腑に落ちた。
やみくもに繰り返すより、修正の方法を組み込んで練習を回すことが大事なんだ。
僕のお絵描きサイクル
僕のやり方はこうだ。
- 細かいグリッドで位置感覚を正確につかむ
- すぐにフリーハンドで模写
- 粗いグリッドで位置感覚を再確認
このサイクルを回すことで、感覚をつかみ、失敗し、修正できる。
上達はその繰り返しだ。
待ってろ、リョータ!

キスラー先生は「20回トレースしてみなさい」と言う。
よし、やろう。20回どころか、納得いくまでとことんやってやる。
グリッドなしの紙とペンだけで、このレベルが描けるようになるまで。
待ってろ、リョータ!
最高のお前を描いてやるからな!
そしていつか――どんなものでも見ただけで正確に再現できるようになってやる。