ズボラ農家と稲の覚悟──ベランダの灼熱地獄で咲いた“あきらめない穂”

いつものように、ベランダに出る。
期待なんてしてない。というか、してないフリしてる。

でも、ふと目をやった稲の先端に……なんか、ついてる。
え?……穂?
マジで?

思わずしゃがみ込んで、まじまじと見た。
しっかり米粒の形。
しかも、白いヒモのようなオシベまで、ちょろりと出てるじゃないか。

触ってみたら……硬い。
そこに、ちゃんと命が詰まってる感触があった。

鉢?いや、ペットボトルですけどなにか?

ここで、稲の生育環境をご紹介しよう。

  • ベランダ(灼熱地獄、コンクリからの熱風付き)
  • 鉢じゃなくて、カットしたペットボトル(雑に切ったやつ)
  • 水やりは気づいたときに
  • 土?近所の園芸屋で「とりあえずこれっぽい」で買ったやつ(後に赤玉土を加えた)
  • 日陰?何それおいしいの?

要するに――
育つわけがない。

それでも、穂は出た

葉っぱは数本しか伸びていない。根元は黄色く枯れ気味。背丈なんて僕の脚の長さくらい。田んぼでよく見る稲とはちょっと違う弱々しさ。
そこらへんのネコジャラシの方が100倍元気。

そんな中で、稲は穂を出してきた。

もはや感動とかじゃない。
これはもう、衝撃だ。

ベランダという植物界の修羅の国で、しかも、育てる側がズボラ界のラスボスみたいな僕。

それでも穂を出してきた稲の姿に、思わず「すまん」と謝りたくなった。

「あ、もう無理っす」っていう穂だったのかも

ちょっと冷静になって考えた。

なんで、こんな早いタイミングで穂が出てきたんだろう?
僕の記憶では、穂が出るのは秋口だった気がする。

そう思っていた矢先、ふとよぎったひとつの仮説。
これは“あきらめの穂”では……?

つまり、稲の中でこういう判断がなされたんじゃないか?

「この環境じゃ、もうこれ以上は無理っぽい。だから今、穂だけは出しておこう」

……なんか、めちゃくちゃわかる。その気持ち。
この星で生きる人類の8割は共感するやつだ。

でもね、だからこそ、すごいんだよ

どんな環境でも、どんな育て主でも、
生き物は、できる限りのかたちで命をつないでいこうとする。

葉がしおれても、土に栄養がなくても、ベランダがサウナでも、育てる人間が超ズボラでも。

「いまできることを、やってみる」
稲はそれを選んだんだ。

それって、人間にとっても、かなり強いメッセージじゃないか?

ズボラのくせに、学びだけは深い

今回、稲が穂を出してくれたおかげで、来年の課題がはっきりした。

  • 穂を遅らせるには、もっと栄養と余裕が必要?
  • 葉っぱを元気に育てるには、水と土の管理が重要?
  • ベランダじゃなく、もはや田んぼを借りた方が早い?

いや、最後はちょっと現実逃避か。

でもこうして、稲が一歩先に進んだことで、僕もまた一歩、農家(もどき)として成長したんだと思う。

締めくくりに、もう一度謝っておこう

稲よ、本当にありがとう。
こんな環境で、こんな僕のもとで、よくぞここまで……。

でも、来年はもうちょっとちゃんとやるから。
多分。
できたら。
…たぶんね。

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2025-08-03|タグ:
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