我が師匠フェリックス・シャインバーガーはこう言った。
「落書きはあなたを自由にするんだよ」
僕はこの言葉を信じて、スケッチブックに落書きをするようになった。
でも、自分の書いた落書きを見てみると……
ほんとにこれ、落書きか?
なんだか大人しいし、ビビってる。
キレイに見せようとしてる感じがして、失敗を恐れてる気がする。
なにより、見てて楽しさが伝わってこない。
「下手から始める」というコツ

フェリックス・シャインバーガー師匠はこう言った。
「わざと下手な絵から始めるのがコツだよ」
そう。
怖がってるんだよね。
理想に届かない恐怖、間違えることへの恐怖。
スケッチブックなんて、自分だけの秘密基地。
誰に見せるわけでもないし、何を書いても許される場所なのに。
それでも、プライドが勝手にブレーキをかけてくるんだよ。
あなたもあるんじゃないかな。
人に笑われるのがイヤだとか、カッコ悪い自分を見せたくないとか。
そういう気持ちが、やりたいことにリミッターをかけてくる。
左手で失敗を楽しむ

で、僕は決めた。
リミッターを外すなら、失敗しかしない方法でいこう。
たどり着いた結論は「左手で描いてみよう」だった。
僕は生粋の右利き。
左手なんて、これまでの人生で数えるほどしか使ったことがない。
文字を書くなんて無理ゲーだし、絵なんてなおさら無理。
でも、どうせ失敗しかしないなら、その失敗を思いっきり楽しんでみようと思ったんだ。
ビール片手に線を引く快感

夕暮れ前のブリューパブ大曽根。
右手にビール、左手にペン。
目の前には、サボテン。
うん、予想どおりめちゃくちゃ(笑)
左手で絵を描いたのは、52年生きてきて初めてだと思う。
いや、小さいころに利き手なんて意識してなかった頃があったかもしれないけど、記憶にない。
もう、左手をどう動かせばいいのか、そこからわからない(笑)

えい!ヤァ!って線を引くと、左手がぎこちなく動く。
絵を描いてるというより、ペン先をノートに擦りつけてるだけのような感じ。
ほら、チンパンジーにペンを持たせて何か描かせてるあの感じ。
でも、これが楽しいんだよね。
自由だし、失敗してもいいって思える安心感がある。
下手くそな絵を笑いながら楽しむ余裕。
ビールを飲みながら一人で盛り上がってる自分、めちゃくちゃイケてると思わない?
完璧より「今」を楽しむ
数分後、なんとなくサボテンの形のようなものが出来上がった。
試しに右手で描いてみたら、サラサラっと描けた。

で、見比べると…どっちもたいして変わらん(笑)
右手でも絵のレベルなんてゼロに近いから、左手と大差ない。
違うのは、右手だと慣れてるからちょっと早く描けるだけ。
だったら、理想とか完成度とか、そんなものに縛られずに左手で描いてみるのも面白いよね。
完璧を目指さなくていい。
その瞬間のワクワクに心を向けると、気持ちがふっと軽くなる。
失敗を愛する旅へ

「We Love Bad Ideas」という言葉を掲げ、失敗するために絵を描くフェリックス・シャインバーガー師匠の教えに、ちょっと近づけた気がするんだ。
よし、これからも左手で描こう。
「左手だから線がグチャグチャなんだよね」って言い訳しながら、失敗を愛していくのも悪くない。
ビール片手にそう思った。
たまには、パブの隅っこでビール片手に絵を描くなんて、ちょっとカッコよくない?(笑)
