2026-04-26

己書四級にレベルアップした日、アートな文字に心を奪われた

練習しているのに、本番になると崩れる。

字でも、絵でも、ランニングでも、そういう瞬間がある。家では少しつかめた気がしていたのに、いざ人前で書こうとすると、あれ、なんか違うぞとなる。

毎月第2、第3金曜日に開かれる己書の幸座(講座)。今回は、平日に来られない方のために、土曜日にも開かれた。

昼間は割と空いている僕も、もちろん出席の予約を取っていた。

実は、この1週間、夜な夜な己書の練習に打ち込んでいた。苦手だった文字のバランスを取れるように、猛特訓を重ねていたんだ。

その成果を発揮する時がきた。

「簡単ですよ」に乗せられて

選んだお題は、ハガキの下に4匹の可愛い動物が並び、その上に文字を書くというもの。

猿、ブタ、カッパ、パンダ、ペンギン、ネコ、ウサギ、犬。下の方にちょこんと動物たちが並んでいる。

お題を見ると、文字が中央にギュッと凝縮されるように並んでいる。

先生はこんなことを言っていた。

「簡単に書けますよ」

その言葉にそそのかされて、このお題を選んだってのが正直なところ。

まずは、動物のイラストを描く。

まっ、問題ないでしょう。

お次は、いよいよ文字を書く番だ。

しかも、このお題はバランスよく文字を書かないといけない。この1週間の特訓の成果を見せる時がきた。

練習の成果、いきなり崩れる

「敵もさるもの 引っ掻くもの」と書く。

いきなり、圧倒的にバランスが悪い。

文字をハガキに収めようと意識するあまり、右に寄ってしまった。あの特訓はいったい何だったのか。

思わずガックリ。

すると先生から、こんなアドバイスがあった。

「普通、文字を書くときは右と上に詰めて書くから、癖になってるんですよ」

なるほど。僕が下手くそなのではなく、日常の文字の癖が出ているということか。

一安心である(笑)

さらに先生は言った。

「お題と見比べるってことはないから、これはこれで成立してます」

先生、甘やかしすぎです(笑)

下を添えると、文字が収まった

気を取り直して、文字のバランスに気をつけて書いていく。

先生が書いたお題に近づくべく、集中する。

この1週間で分かったことがあった。

己書って、文字の上の部分を強調して書くと、それっぽくなる。今までの僕は、上の部分も下の部分も同じように書いていた。だから、ハガキに収まらずにはみ出していた。

下の部分を添える程度にしておく。

それだけで、不思議とハガキに収まる。しかも、引き締まった文字にも見えてくる。

今回のお題は、まさに僕が見つけたコツどおりの書き方をしていた。ちょうどいい実践の場だった。

大胆に上の部分を強調して書いていく。

人様にお見せできるような出来栄えとは、とうてい言えない。ただ、文字はハガキにスポッと収まっていた。

先生からも言われた。

「下の方を大きく書く癖がなくなりましたね」

えっ。先生は、すでに僕の癖に気付いていたんですね。

さすがです。

どうやら先生は、僕が自分の癖に気づくまで待っていたみたい。こういうのって、言われてやるより、自分で気づいたほうが理解にはっきりと差が出る。

ひとつ、己の階段を登った気がする。

この日は、四級の認定証書もいただいた。

積み重ねが、ちゃんと形になって手元に来た感じがした。

ただ、不思議なことに、証書をもらった喜びよりも、この日の僕の頭を占めていたのは、目の前のお題の文字バランスだった。

その文字は、アートだった

8枚書き上げると、先生がファイルからお題を取り出した。

幸座で出されるお題は通常、先生が別の師範の方から習得したものを、先生が描いて出してくれる。

見せてくれたのは、先生が描いたものの元となったもの。つまり、オリジナルのお題だった。

見た瞬間、圧倒された。

先生のお題も、もちろん美しくまとまっていた。それは、書としての美しさだった。

けれど、オリジナルのお題は全然違った。

完全に、アートの領域に入っていた。

写真をお見せできないのは、本当に申し訳ない。いつか、僕の書いたものをお見せします。

ハガキの中央に、みっちりと凝縮された文字。詰まっているのに、どこも破綻していない。

文字のパーツが、余白をきっちりと埋めている。書と言っていいのか、パズルのように埋め込まれた文字。

模様のようでもあり、よく見れば文字になっている。

そんなお題だった。

先生、よく言いましたよね。

「簡単」なんて(笑)

褒められたいより、書いてみたい

こんなアートのような己書を書いてみたい。

僕は夢中になって、オリジナルのお題の写真を撮っていた。

上達したい。先生に褒められたい。そういう気持ちも、もちろんある。

ただ、この日いちばん強く残ったのは、もっと単純な感情だった。

こんな文字を書いてみたい。

家に帰ったら、また練習しよう。

あのアートのような文字に、少しでも近づくために。

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