とうとう、この瞬間が来た。
唎酒師の修行を始めて、2週間。
ついに、全課題の提出が完了した。
ドキドキしながら「提出」ボタンをポチッと押したその瞬間、胸の奥でなにかがふわっと浮かんだ。
ほっとしたような、ソワソワするような、
ちょっと寂しいような……。
四つの壁を越えて
唎酒師のeラーニング講座は、全部で4つの課題に分かれている。
最初に挑んだのは、
「もてなしの基(もとい)」という170ページのテキストから出される課題1。
そして、320ページにもわたる「日本酒の基」から出題される課題2。

この2つは、いわば“知識の壁”。
僕はテキストをよなべして読み込み、5日間で一気にやりきった。
でも本番はここからだった。
課題3──人生初めて悩みながら飲んだ
課題3は、日本酒のテイスティング。
手元に届いた2本の課題酒を味わい、その香り・味・口当たりを言語化していく筆記形式の試験だ。

1️⃣ まず1本目。
これは比較的スムーズだった。
テキストの知識と照らし合わせれば、これは「〇〇系だな」とすぐにピンときた。香りも味も、まさに典型的。
ウォーミングアップにはちょうどいい。

2️⃣ ……問題は、2本目だった。
鼻を近づけると、ふわっと広がるのは、◯◯な香り。
X酒っぽいな、と思った。
でも、口に含んでみると……あれ?

この飲みごたえは、X酒というよりもY酒に近い気がする。
でも、香りはどう考えても違う……。
もう頭の中がグルグル回り始めた。

☝️ ちょっとしたコツをひとつ:「香りが減ってきたな」って思ったらメモ紙とかでフタをして、グラスに香りが満たされるのを待つといいよ。
飲み比べても分からない
テキストを何度も開き直し、トレーニング用の4種をグラスに注ぎ、ひとつずつ香りを嗅ぎ比べて、飲んで、メモして……。
何度も何度もグラスを傾けた。

気づけば、机の上には酒瓶が並び、ノートは殴り書きでいっぱい。
「うーん……これは、いったい、どのタイプだ……?」
酒の味に悩む。
そんな経験、初めてだった。

酒仙人が与えてくれた試練に違いない
けれど、思ったんだ。
この課題には、意味がある。
酒の世界に足を踏み入れた者が最初に出会う試練のような気がするんだ。

まるで酒仙人が背後でニヤニヤしながら言ってる気がした。
「ほれ、簡単にはいかんぞ……」って(笑)
課題4──伝える力が、問われる
最後の課題は、日本酒のセールスプロモーションを自分のアイデアで考えるというもの。
知識だけじゃダメ。
このお酒のどんな魅力を、どんな相手に、どんな言葉で届けるのか。
まさに、“伝える力”の壁だった。
テキストをめくっては解答欄を埋める。
一行書いては頭を抱え、書いて、消して、書いて、消して……
気づいたら解答欄が全部埋まってた。
「テイスティングは感覚だけど、プロモーションは言語勝負だなぁ」
と、あらためて思い知らされた。
そして、提出のとき
すべての解答欄を埋めると、「提出」ボタンがあらわれた。
指がちょっと震えてた。
「よし、いけ!」
と、自分に言い聞かせて、ポチッ。

画面が切り替わる。
提出完了。
結果が返ってくるのは、最長15日後。
たとえ間違っていても、添削を受けて再提出ができる。
コツコツ続ければ、必ず合格にたどり着けるようになっている。
でも、どうせなら一発で合格したい!
「唎酒師」を名乗るその日が、一日も早く来ますように。
今はただ、胸の中の酒瓶みたいなドキドキを抱えて、その日を待っている。










