
聖地・瑞穂にチャントの響きが戻ってきた。
4月19日。
もうずっと、このまま永遠に工事が続くんじゃないかと思っていた。そう感じるくらい長かった3年だ。
瑞穂競技場が世界基準のスタジアムに生まれ変わる。そんな話を聞けば、そりゃ胸も高鳴る。僕は期待を抱えて、地下鉄名城線「瑞穂競技場東」の駅に降り立った。

柿落としとして選ばれたのは、名古屋対福岡の一戦。
改札を抜けたところから、赤いレプリカユニを着たサポーターたちの列が続いていた。そこで早くも思ったんだ。
ああ、瑞穂にサッカーが帰ってきたなって。
世界基準のスタジアム

けれど、この日いちばん驚いたのは、スタジアムそのものじゃなかった。
本当に変わっていたのは、瑞穂の外側だった。
スタジアムに着いて見上げると、なんとなく国立競技場のような木の温もりがある。そりゃそうか。設計したのは同じ隈研吾さんだ。

人もすごかった。とにかく、たくさんいる。
かつて、瑞穂でここまでの人出を見たことがあったっけと思うくらいだ。
それでも不思議と、どこかが詰まっている感じはしない。

出入り口があちこちに設けられていて、人の流れがきれいに分散している。
混雑しているのに、苦しくない。新しいスタジアムは、ちゃんと今の時代の器になっていた。
山崎川が遊歩道になり、公園がキッチンカーのお祭りに

けれど、歩いてみてもっと心が動いたのは、その周りだった。
かつてはドブ川みたいに思われていた山崎川に、遊歩道が整備されていた。
川辺では親子連れが足を止めていて、のんびりした空気が流れている。以前の瑞穂は、競技場がデデーンと建っていて、その周りはどこか殺風景だった。
そんな景色を知っているからこそ、この変化は大きかった。

さらに、スタジアムの隣の公園にはキッチンカーがずらりと並んでいた。22台。DJブースまであって、軽快な音楽が鳴っている。もう完全にお祭りである。
ここの公園って、昔は試合の日でも活かされていなかったんだよね。
広いのに、もったいないなとずっと思っていた。
サッカーの日を、街ごと楽しむ場所へ

例えば川崎は、試合の日になるとスタジアムの外まで丸ごとお祭りみたいになる。
屋台を見て歩くだけでも楽しいし、サッカーにそこまで詳しくなくても、その場にいるだけで気分が上がる。そういう積み重ねがあって、クラブの人気も文化も育っていったんだと思う。
名古屋もようやく、その景色を作ろうとしているんだなと感じた。
サッカーの試合がある日、ただ90分を観るためだけに集まるんじゃなくて、その前後も含めて街ごと楽しむ。
Jリーグが始まって33年。ついに瑞穂も、そういう場所になろうとしているのかと、僕はちょっと感動していた。
試合開始前はやっぱり行列

さて、せっかくなのでキッチンカーで何か食べようと思った。
ところが、どの店にも長蛇の列。試合開始2時間前で、ちょうど観客がスタジアムへ向かうピークだったんだろう。
少しその辺を歩きながら時間をつぶす。
1時間ほどすると、さっきまでの人波が嘘みたいに落ち着いていた。キッチンカーの列も消えている。
よし、今だ。
瑞穂のスタグルといえば悲しい焼きそばだった

ゆっくり選べるのはありがたい。
なにしろ僕は、この日の試合のチケットを持っていない。ただ瑞穂がどう変わったのか見たくて、ふらっと来ただけの人間である(笑)
そんな僕が選んだのは、焼きそばとビールだった。

瑞穂のスタグルといえば、昔の僕の記憶では焼きそばくらいしかなかった。
そしてその焼きそばが、なかなか豪快だったんだ。冷えて固まった麺を箸で持ち上げると、全部がパカッと一塊でついてくる。
あれはあれで瑞穂の思い出だったけど、今回はどうなっているのか、ちょっと確かめてみたくなった。
まず、温かい。
それだけでちょっと感動した(笑)
普通に美味いじゃん

箸を入れて持ち上げると、麺がちゃんと一本ずつほどける。
口に運ぶと、普通に美味い。いや、普通にうまいって大事だ。
あの焼きそばを知っている人ほど、この進化にはグッとくると思う。
スタジアムだけじゃなくて、グルメまで「世界基準」になっていた。おっと、「世界」の何たるかを知ってるわけじゃないけど(笑)
試合のチケットがなくても、ここまで楽しめる。

それがこの日の、いちばん大きな発見だったかもしれない。
中からは、サポーターのチャントが地響きみたいに響いてきた。どうやら試合が始まる時間らしい。ああ、やっぱり見たかったな。次はちゃんとチケットを取って来よう。
あの場所はもう、試合を観る人だけの場所じゃなかった。サッカーのある日を、街ごと楽しめる場所になっていた。
チャントの熱気を背中に受けながら、僕は地下鉄の駅へ向かった。










