
昨日の名古屋シティマラソン、19キロ過ぎ。コースの隅で少しの間、しゃがんでいた。
「大丈夫ですか?」
そう、声をかけられた。
もちろん、全然大丈夫。むしろ、走れる喜びに満ちあふれていたくらい。
相棒の島ぞうりに不具合がないか、チェックしていただけ。

たぶん、声をかけてくれた方は、「そんなもので走っていて大丈夫なのか」と思ってくれたのだろう。
僕はこう答えた。
「むしろ、こっちの方が走りやすいんですよ。いかがですか?」
すると、その方は「いやいや」と苦笑いして、走り去っていった。
そりゃそうだ。
名古屋シティマラソンで、島ぞうりを履いて走っているヤツなんて、僕しかいなかったからね。
「あっ、ビーサン」が飛び交うレース

実際、走っている最中は、あちらこちらから「あっ、ビーサン」って声が聞こえてきた。
ランナーのみなさんから見たら、「なんかおかしなヤツがいるぞ」と気になって仕方なかったのだろう。
正直に言っておこう。
誰もやらないことに挑戦しているという、その状況そのものが、ちょっと気持ちよかった。
密かな快感ってやつである。
島ぞうりは、思った以上に快適だった
そして肝心なのは、ネタとして面白かっただけじゃないってこと。
島ぞうりでのハーフマラソンは、驚くほど快適だった。
まず、地面の感触がダイレクトに伝わってくる。
コンクリートとアスファルトの違いがはっきり分かるし、白線の上を走ると、スッと滑らかな感触になる。
その違いが走りにどう影響しているのか、正直、理屈ではまだよく分からない。
地面から入ってくる情報が多いせいか、脳が常に起きている感じがあったんだよね。
走りながら飽きることがなかった。
ずっと新鮮な気分のままで走れていたのは、かなり大きかったと思う。

それに、風が足を通り抜けていく気持ちよさもある。
シューズを履いていると、どうしても終盤は蒸れてきて、足先が暑苦しくなってくる。
島ぞうりには、それがない。
足元だけ、ずっと外のまま。
あの解放感は、かなりいい。
ごまかしの効かない走りになる
フォームの安定も印象的だった。
いつもならレース終盤になると、猫背になったり、ガニ股っぽくなったりして崩れてくる。
今回は、最後まで大きく乱れることなく走れた。
島ぞうりだと、ごまかしが効かないのだ。

特に厚底シューズだと、疲れてフォームが崩れてきても、なんとなく走れてしまうところがある。
島ぞうりは、そうはいかない。
体幹を安定させて、足をクルクルとリズミカルに回していく。そういう走り以外をしようとすると、逆に難しい。
フォームが乱れれば、そのまま疲れや痛み、ケガにつながる。
だからこそ、自然と走り方が整っていたのかもしれない。
ちゃんと完走、島ぞうりも生還

そして、ほんとうに何の問題もなく完走できた。
走り終えたあと、島ぞうりをよく見てみたけど、鼻緒にもソールにも大きなダメージはなし。
よく見ると、ほんの少しだけソールが削れたような気もするけど。
それでも、21キロを走り切った相棒としては十分すぎる働きだった。

ただし、疲労はまったく別物だった
……と、ここまで書くと、「じゃあ島ぞうり最強じゃん」という話に聞こえるかもしれない。
しかし、そんなに甘くはなかった。
ノーダメージってわけには、さすがにいかなかったね。
むしろ、疲労だけで言えば、厚底シューズの方が圧倒的に楽。
内転筋や腹筋みたいな、ランニングでよく使う筋肉がドスンと重たくなるのは想定内。
それに加えて、今まで感じたことのない疲れというか痛みがあった。
足の指が、ジンジンと熱くなっていたんだ。

たぶん、指で地面をつかむようにして走っていたからだろう。
去年は、厚底の代名詞でもあるホカのボンダイを履いて走った。
それに比べると、今年はまるで別物だった。
たかが21キロ、と言いたいところだけど、その21キロでしっかりボロボロになった。
厚底と島ぞうりでは、疲労度において天と地ほどの差がある。
それを、身をもって実感した。
ツラいから楽しいかもね
じゃあ、また厚底に戻るのかって?
んなこたない。
むしろ逆。こういうのを待ってたんだよね。
足の指がジンジンする。腹筋も内転筋もズシンと重い。
いいじゃないか。それそれ、それだよ。

厚底を履いてたら、うまいこと包まれて、守られて、気づいたら無傷で帰ってこれる。もちろん、それはそれですごい。文明の勝利。クッションの正義。ホカはえらい。
僕はそんなこと全部承知で島ぞうりを履いた。
正義も文明も関係ない。こっちは、もっと怪しい道を歩いてるんだ。
痛みも疲れも、なんかこう……宝の地図みたいなんだよね。
見つけた宝の地図。探し当てるしかないね
といっても、どこに宝が埋まってるのかは全然わからない。そもそも何を掘り当てたいのかすら、まだ怪しい(笑)
そんな時に、体が「こっちだぞ」って微妙なヒントを出してくる。
いいねぇ。急に冒険っぽくなってきた。その手がかりを拾っていけば、どこかに僕だけの走り方が埋まってる気がするんだ。
それを掘り当てたら、かなりおもしろいことになる。
だったら、戻る理由がない。
島ぞうりでもっと強くなれる予感がする。予感というより、100%の確信かもしれない。
次の岐阜清流まで、島ぞうりで走り込みだな。
なんならまた「あっ、ビーサン」って言われに行くまである。










