最近、ずっと引っかかっていたことがある。
イラストレーターを家で使うたびに、ノートPCのタッチパッドに手を伸ばして、ふうっとため息をついていた。
無理なんだ。タッチパッドじゃ、イラストレーターはまるで歯が立たない。

左手の中指と人差し指でキーボードを操りながら、親指でタッチパッドを滑らせる。
右手の親指はその間、タッチパッドに添えている。…って、こんな器用な動き、できるわけがない。
二本の指でタッチパッドを動かすから、しょっちゅう右クリックの動きが混ざってくる。作業は混乱しっぱなし。
しかも、左手は無理な角度でコマンドキーやオプションキーを押さないといけない。指先をグッと手のひらに寄せて、つりそうになりながら。
もう限界だった。
トラックボールが救ってくれるはず

そんな僕を救うために、届いたのが――トラックボール。
マウスだと場所を取ってしまう、狭い作業机。
でも、トラックボールなら、手元から動かさずにすべてを操作できる。
今まで使ったことはなかったけれど、もう賭けるしかなかった。
小さな段ボール箱におさめられたその機械は、パッと見た瞬間から手のひらにフィットしそうな頼もしさ。

ゴミを最小限にする簡素な包装。妙にうれしくなる。
厚紙を外して、手のひらにすっぽり収まる丸いトラックボールの上に親指を乗せる。
クルクル軽く回る感触が指に伝わった。これが、僕の新しい相棒か。
新しい操作法に混乱
さっそくトラックボールをセッティングして、イラストレーターを立ち上げた。
まず、気づいたのは左手の解放感。
もう、変な角度でキーを押さなくていい。
左手はキーボードの操作だけに集中できる。これは、間違いなくミスが減る予感しかない。

右手の親指でそっとボールを転がしてみる。
ほんの少し動かしただけで、カーソルがスイスイと動く。
この軽さ。この滑らかさ。まるで指先で空気をなぞっているような感覚だった。
パッケージにあった「筋肉活動25%軽減」という文字を思い出す。確かに、指先しか動いていない。妙にリアルだ。

クリックはマウスと同じボタン操作。これは特に違和感なし。
…いや、あった。
カーソルを動かしている親指で、思わずクリックしようとしてしまう。
ボールを押し込もうとするけれど、当然ながら、ボールはボタンじゃない。あれ?あれ?と焦りながら、人差し指でカチッとクリックする。
クセっておそろしい。しばらく使ってみても、ふと親指でクリックしようとする自分に笑ってしまう。なんなら、人差し指でボールを動かそうとする始末。
たぶんこれ、野生の本能だ。
動かしているものをそのまま押してしまいたいっていう、あの感覚。混乱している今さえも、ちょっと楽しい。
拡大縮小が楽すぎる!

イラストレーターの作業で一番悩ましかった拡大縮小。
これが、トラックボールだと革命的だった。
オプションキーを押しながら、スクロールホイールをコロコロ回す。これだけでズームイン、ズームアウト。
指先の操作で、画面が生き物みたいに伸びたり縮んだりする。スムーズ。速い。気持ちいい。
この瞬間、「ああ、これだけでもトラックボール買った意味があったな」と確信した。
ブログ更新くらいならタッチパッドが楽

もちろん、何でもかんでもトラックボールが万能というわけじゃない。
たとえば、ブログの更新作業くらいだったら、タッチパッドの方が気楽。
キーボードから両手を離さずに、親指だけでカーソルをスイっと動かせる。
シンプルな操作なら、タッチパッドの方がまだ上手。
けれど、複雑な動きが必要なクリエイティブ作業には、やっぱりトラックボールだ。完全に専用機になりそうな予感。
これはつまり、もっと何かを創れ、ということだろうか。
謎の2つのボタンを攻略だ

まだ使いこなせていない、謎のボタンが2つ。
これを攻略して、完全に自分の手足にできたとき、イラストレーターで、もっと自由に、もっと遠くへ行ける気がしている。
そう考えると、また一つワクワクが増えた。





