
母の手作り弁当の味、覚えてる?
大曽根商店街の中ほどに一本の、のぼりが立っていた。
「手づくりお弁当」と書いてある。
月・水だけの小さくて、あったかい店

毎週月と水曜日限定でオープンする「MOM APRON」のお弁当屋さん。
小さな長テーブルだけの、小さなお店。テーブルの上には2種類のお弁当。それぞれメインにお肉とシャケが乗っていた。
本当は3種類あったのだけど、売れ切れてしまったとお店の方が教えてくれた。僕が行ったのは11時半。早めに買いに行くといいかも。
実は先週の水曜、商店街でワラーチランニングをしていた時、気になって買ってみた。
そしたら、めちゃくちゃ美味しくてね。「毎週買うしかない!」って思ってまた買いに来たってわけ。
寒風の中で聞いた、こだわりの話
真冬の寒風が吹いていた。
お客さんが来るのを寒そうに待っていたお店の方に、ちょっとだけこだわりを聞いてみた。
全て手作りで、冷凍食品は使わない。野菜もフレッシュなものを使っているって。そりゃ、美味しいわけだ。
そして、僕が刺さった一言があった。お母さんのお弁当みたいに心を込めて作ってるんだとか。
僕はそんなお弁当を食べたかったんだよね。
ピンク色に焼けたシャケが美味しそうだったので、そっちのお弁当を買って帰った。
ふたを開けたら、祭りだった

フタを開ける。
ご飯の上にぎっしりとおかずが詰まっていた。
シャケ、玉子焼き、ミートボール、がんもどき、フキ、こんにゃく、おひたし、レンコン。他にもあるけど、もう調べていられない。こりゃ、すごいわ。
こんなにバラエティーに富んだ色とりどりなおかずが入って880円って、安すぎでしょ?
ランニングを終えてお腹減ってるからね、さぁ食べちゃおう!
玉子焼きをパクリと。焼いた香ばしさと玉子の美味しさが詰まっている。
がんもどきからジュワっと煮汁があふれ出して、あぁもう幸せ。
次々とおかずをパクパクと。
どのおかずもね、しっかり味が染みていて、やさしい味がするんだ。
心が先に満腹になった日

その時僕は、高校時代に戻っていた。
手にしていたのは、母が作ってくれたお弁当。毎日持たせてくれていたんだ。
当たり前みたいに。
手を抜いたお弁当なんて一度もなかったな。いつも絶対美味しいし、野菜もたっぷり入ってて栄養のバランスもバッチリだった。
空っぽになった弁当箱を見て母は「どんだけたくさん入れても食べるねぇ」なんて笑ってたっけ。
今思えば、母の愛情が詰まっていたんだ。そんなことも知らず僕は、勉強もせず遊んでばかりで……。
母のお弁当を思い出しながら食べ終えた。
お腹より先に、心が満腹になっていた。久しぶりに母に電話してみよう。「お弁当ありがとう」って。たぶん「えっ?」ってびっくりするけど(笑)
また行く理由が増えた

またMOM APRONのお弁当を買いに行こう。
美味しいのはもちろん、忘れつつあった母の味を思い出させてくれるからね。
あの寒風の中で、手をこすってたお店の方の顔が浮かぶ。いつか「おかえり」って言ってもらえるように通ってみよっかな。





