弘法、筆を選ばず。
KOKIX、筆ばかり選んで何もせず(笑)。
栄の文具店で出会った一本

まだまだ猛暑の昼下がり。クーラーに逃げ込むように栄の文具店をふらふら歩いていたら、ふと目にとまったのが一本のボールペン。
三菱鉛筆の「ユニボールシグノ太字」。
一見、どこにでもある普通のボールペン。けれど、なぜか僕の足が止まったんだ。なんだか視線を外せなくなった。
なぜか?
それは一瞬、万年筆に見えたから。

普通のボールペンよりも太くて、真ん中にかけてふっくら優美にふくらむ軸。キャップ付きなのも、万年筆っぽい。うん、かっこいいぞ!
軸の後ろ端まで丸く一体に仕上げられていて、「お前、ホントにボールペンか?」と問いかけたくなるたたずまいだった。
思わずキャップを外す。

普及品ならプラスチックのペン先ホルダーが、こいつは銀色にキラリと光ってる。
その瞬間、完全に万年筆の空気をまとった。

にもかかわらず、軸には「事務・あて名書用」とそっけない一言。
「このペンのターゲットは誰なんだ!」って考え込んでしまった。
苦手だったボールペンとの違い

実は僕、これまで「ボールペンは絵に向かない」と思い込んでいた。
0.38とか0.5ミリだと、字を書くにはいいけど、絵だとカリカリして紙の繊維を拾う。大きく線を引こうとするとガリッとひっかかって、イライラすることもしばしば。
でも、このシグノ太字は1.0ミリ。
でかいボールなら紙の上をスイスイ滑るかもしれない。まるで太いタイヤの自転車が段差を気にせず進むみたいに。そんなイメージが浮かんで、気づけばレジに並んでいた。
運命の試し書き

家に帰って試し書き。
……やられた。
1.0ミリの線は、太くて、黒くて、力強い。

太さは、コピックのマルチライナー0.5と0.8の間くらい。お絵描きにはちょっと太めの力強い線が描ける太さ。
細字のボールペンだと、ある程度、筆圧をかけて書かないと線が髪の毛のように細すぎてしまう。でも、こいつなら万年筆のように紙の上にペン先を置いて滑らすだけで、しっかりとした太さになるってのがうれしいんだ。
嫌いだったカリカリ感はまったくない。ヌルッと紙の上を走っていく。インクはユニボールらしく濃く、まるで光を吸い込むような黒さ。白い紙とのコントラストがたまらなく美しい。
欠点のない一本

思わず心の中でつぶやいた。「これは、運命の出会いじゃないか?」
わずか150円のボールペンに運命を感じる自分とか、どうかしてる(笑)
これまで数え切れないほどのペンを試してきた。でも…
黒さはいいけど書き味が微妙、最高だと思ってもコスパが悪い……そんな風にどれも決定打に欠けていた。
でも、このユニボールシグノ太字には、不思議とマイナスが見当たらない。1本150円前後で、持つと万年筆のように堂々としている。しかもゲルインクらしい滑らかさがある。
色のラインナップには白や銀、金といった絵描きが使う変わり種まである。
ペン沼の入り口

いやぁ、面白いボールペンを見つけてしまった。
ネットで検索しても、この良さに気づいてる人は意外と少ないみたい。しばらくはこいつを相棒にしてみよう。
……あ、これまで集めてきたペンたちはどうしよう。
引き出しの中で「また新入りかよ」とボヤいてる気がする(笑)
でも、こうして気まぐれに出会った道具に心を動かされる――そんな“寄り道”こそが、実は一番の楽しみなのかもしれない。
また今日も、150円のボールペンに人生をかき回されている。




