
絵を描くって、本当にめんどくさい。
準備がめんどくさい。片付けがめんどくさい。使いたい色がすぐに出てこない。
そういう小さな不自由さが、家で描くときのハードルになっているのかもしれない。
パレットの不自由さがなくなれば、水彩ってもっと楽しくなるんじゃないか。
そんなことを考えるようになった。
家でも描きたいけど、めんどくさい

毎月第2と第3金曜日、13時から大曽根商店街の入り口にあるオゾンアベニュー会館で、己書の幸座(講座)が開かれている。
幸座のたびに先生からは、お題を家でも復習するように言われている。
といっても、みなさんご安心ください。
先生はスパルタではありません。むしろ、褒めて褒めて褒めちぎってくれるタイプ。
僕なんか、先生に褒められたくて幸座に通っているようなところがある(笑)
水彩色鉛筆は楽。けれど色の強さが物足りなかった

家で復習するために、最近は絵の具の代わりに水彩色鉛筆を使っていた。
水彩色鉛筆はいい。
パレットを出して、水を用意して、筆を洗って、絵の具を片付けて……という工程がスッポリなくなる。
おかげで、夜にちょっと復習するハードルが下がった。
これはかなり大きい。
続けるためには、根性よりも「始めやすさ」が大事なのだと思う。
ところが、描いているうちに気がついた。
水彩色鉛筆って、色が薄いんだよね。
もちろん、僕の使い方の問題もあると思う。
濃く描こうとして、芯をグリグリとハガキに押しつける。すると、今度は筆跡が残ってしまう。色を濃くしたいのに、線の跡が強く出る。
これはこれで味なのかもしれないけれど、己書として見たときに雑な感じがする。

写真の左が水彩色鉛筆、右が絵の具。
見比べてみると、やはり右の深い色合いが印象に残る。
やはり、水彩は絵の具がいちばん思い通りに描けるのかもしれない。
今のパレットには、使いたい色が足りなかった

そう思って、自分のパレットを見てみた。
茶色が多い。似たような茶色が5色もある。
僕が使っているホルベインの24色セットは、どうやら自然を描くのに向いたセットらしい。たしかに、風景画を描くなら便利なのだと思う。

ただ、僕が今やっているのは己書である。己書では、赤とか青とか黄とか、わりかしパチッとした原色を使うことが多い。
ところが、今のパレットには真っ赤とピンクがない。そのたびに、先生の絵の具を少しいただいている。
ありがたい。
ありがたいのだけど、毎回それをやっていると、やっぱり少し気を使う。
そして気づいた。
使いたい色がパレットにない。
これも、家で水彩をやるめんどくささの一因になっているのではないか。茶色を減らして、赤とピンクを入れたい。なんなら、自分の好きな色でパレットを埋めたい。
けれど、空いている場所がない。
パレットって、一度絵の具を入れてしまうと、後から入れ替えるのがかなり難しい。
最初から正解のパレットを作らなくていい

そこで、ひとつの仮説を思いついた。
水彩の何たるかを知らないうちに、いきなりパレットに絵の具を固定してしまうのって、順序が逆なのではないか。
最初から「これが自分の24色です」と決めてしまう。
けれど、本当はそうじゃない気がしてきた。
水彩に親しんでいくうちに、使う絵の具が見極められようになって、パレットに入れる絵の具が決まるっていうのが正しい順序なのではと。
ならば、パレットの絵の具を自由に入れ替えられるようにすればいい。
そうすれば、めんどくささも減る。家での復習も、もっと楽しくなる。絵の具そのものにも、もっと親しめる。
ハーフパンなら、色を入れ替えながら使える

そんな僕のわがまま仮説に応えてくれるものがあった。
「ハーフパン」である。
ハーフパンとは、絵の具を入れる小さな箱型の器。
指先ほどの大きさの、白い小さなケース。この中に絵の具を入れて、自分の使いたい色だけを目の前に並べればいい。

名前に「ハーフ」とつくのは、これより大きい「フルパン」があるかららしい。
僕はそんなに絵の具を大量に使うわけではない。ハガキサイズの己書が中心。それに、僕の憧れのフェリックス・シャインバーガー師匠もハーフパンを使っているようだった。
それを知った瞬間、ほぼ決まりである。
ハーフパンに絵の具を入れていく

さっそく、ハーフパンに絵の具を入れていく。
絵の具を入れる前に、やっておきたいことがある。
ハーフパンの側面に、絵の具の型番と色名を書いておくこと。
絵の具って、塗ると青や紫なのに、固まった状態だと黒にしか見えないものが結構ある。
乾いたあとに、「これ何色だっけ?」となる未来が見える。
なので、先に油性マジックで書いておく。ハーフパンの側面はザラザラしていて、意外と文字が書きやすかった。

絵の具を入れるのにも、ちょっとしたコツがある。
四隅から入れていくと、空気が入りにくい。そうすると、ハーフパンの中にたっぷり、きれいに絵の具が収まる。

ハーフパンは指ではつまめないので、出し入れにはピンセットがあると便利。
色を並べ替えることが前提なら、ピンセットは必須と言っていい。
宝石箱みたいなパレットができた

手持ちの絵の具26色を、ハーフパンに入れてみた。
カラフルな絵の具が、宝石箱みたいにキラキラ輝いている。
一度も使ったことのない茶色が、この中にある。必ず使う大好きな藍色もある。
先生に借りていた赤やピンクも、自分の色として入れられる。
これだけで、家で復習するときの気分が変わりそう。
これは完成したパレットではなく、育てていくパレットだ

使っていくうちに、よく使う色を左側に寄せていく。
あまり使わない色は右側に寄せていく。しばらくしたら、右側の色をベンチに下げる。そして、また別の絵の具を買って試してみる。
そんな使い方をイメージしている。
つまり、これは完成したパレットではない。
育てていくパレットだ。
最初から正解を作るのではなく、描きながら変えていく。使いながら、自分の色を見つけていく。そう考えると、水彩の練習そのものが別のステージへと変わっていく。
「この色でうまく描かなきゃ」ではなく、「この色、ちょっと試してみよう」になる。
この差は大きい。
気づけば、絵の具沼の入り口に立っていた

あれ?
これって、もしかして便利化の話じゃなくて、絵の具沼が広がっている伏線なのでは(笑)
まあ、いいか。
宝石箱みたいなハーフパンを眺めながら、今夜も少しだけ描いてみようと思う。
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