
ここ最近、大曽根の街をにぎわせてる催しがある。
徳川美術館で開かれている「時をかける名刀」だ。
この展示を見にきた人たちが、ついでに大曽根の街に繰り出して、日本酒「伯仲」を飲んだり、喫茶はじまりを中心にしたコラボ企画を楽しんでいる。
いつもは閑散としてる商店街に、人がぞろぞろ歩いているのを見ると、「ついにこんな日が来たか!」ってワクワクしちゃうんだよね。
刀とは何ぞや?と胸騒ぎ

この「時をかける名刀」は、日本中の貴重な名刀を一堂に展示している。
んで、僕も「刀とは何ぞや?」と興味が湧いてきた。
歩いて行ける距離なら行かねば損、とばかりにいそいそと徳川美術館のある徳川園へ向かった。
徳川園に着くと、美術館を前にした中庭にはたくさんの人が歩いていた。普段は静かな散歩スポットなのにね。

ここに入るのは、いつ以来だろう。僕が2002年に大曽根へ引っ越してきたときに行ったから、23年ぶりのはず。
入り口でチケットを買う。何もないような平日の昼なのに、列ができていた。
気分は、刀を手に戦場を駆け抜けた武将である。いざ、出陣じゃ!
黒塗りの鎧兜にひれ伏す

展示室に一歩踏み入れると、いきなりの大迫力。
目の前には、三つ葉葵の御紋の前に鎮座する黒塗りの鎧兜。尾張徳川藩初代藩主・義直公が実際に身につけていたものだ。

戦国の荒々しい気風が残る江戸時代初期に作られたもので、華美な要素は一切ない。お殿様が身につけるには、あまりにも実戦向け。
しかも、実際に銃で撃った跡まで残っている。ほんとに防御力があるのか確かめた上で義直公が身につけていたんだ。
いつ戦が勃発するかわからなかった義直公の時代。ガチの性能だけが求められた鎧兜の圧倒的な力強さに、僕はひれ伏してしまった。
家康の「物吉貞宗」にドキドキ
刀剣への期待感はすでにMAXだ。
展示室を回る。「時をかける名刀」の展示は、グルグル回った最後にある。
それまでは、徳川美術館にある豪華絢爛な所蔵物を楽しめる。
僕が特に気になったのは、所有者が尾張徳川家の正当な当主であることを示す脇差「物吉貞宗(ものよしさだむね)」。

家康が愛用していて、これを持って戦に出ると全勝した、という逸話がある。
ま、晩年の家康は強すぎて無敗だったんだけどね。
この名刀の誂(あつら)え。誂えとは、刀を持つ部分や鞘など、刃物ではない部分の総称を言うんだ。
普通、刀は刀身と誂えは別々で展示されることが多い。この誂えは、尾張徳川家の家宝の中でも最高峰のものの片割れと言っていい。
時代が違えば、僕みたいな下々の人間が目にすることは絶対になかったお宝が、今目の前にあると思うとドキドキしちゃったね。
「伯仲燦然」なんて言葉になるくらい異例の展示
いよいよ特別展示室に到着。ここが「時をかける名刀」のクライマックスだ。
今回の展示のメインは、「本作長義(ほんさくながよし)」という稀代の名刀と、その写しでありながらそれ以上と謳われる「山姥切国広(やまんばぎりくにひろ)」を同時に鑑賞できるというもの。
この2本が出会うことを「伯仲燦然(はくちゅうさんぜん)」というらしい。そんな言葉があること自体、とんでもないことだよね。

滅多に2本同時に見ることはできないらしく、今世紀中にはもうチャンスがないかもしれないという話を聞いた。
同じ星の下に生まれたのに、出会ったと思ったらすぐに引き裂かれる。
「まるで彦星と織姫みたいだな」なんてロマンティックなことを思ったりしたんだよね。

ま、いろいろ書いてるけど、僕がこんなことを知ってるのは詳しい人に聞いた話をそのまま書いてるだけだよ。
うっすい知識で申し訳ない(笑)
刀剣マニアたちの熱量に圧倒
特別展示室は長蛇の列。一歩ずつしか進めない。

上の写真は、「鯰尾藤四郎(なまずおとうしろう)」という刀。ナマズの尾に形が似ているから、そういう名前になったとか。
ゆっくり進んでいき、ついに2本とご対面。
もちろん、2本ともそっくり。というか、どの刀を見ても違いがわからないのが正直なところ(笑)
僕以外の人は刀剣マニアのようで、食い入るように見てたのが印象的だった。

(ちなみに上の写真は、本作長義でも山姥切国広でもない。どの刀だったのかは、全く思い出せないけど、写りが良かったので載せてみた)
中には単眼鏡でドアップで見てる人までいた。
僕には刀の良し悪しはわからない。でも、これを見て熱狂してる人たちの熱量はよ〜くわかった。

この刀が本作長義。刀紋の美しさが、森に生える木々を見るようでドラマティックだった。
大トリ「物吉貞宗」でフィニッシュ!
そして、展示室の大トリを飾っていたのが尾張徳川家の家宝「物吉貞宗」だ。

これを最後に持ってくるあたり、徳川美術館のプライドを感じた。
「こいつこそ名古屋の誇りだぞ!」っていう意思がビシビシ伝わってきた。
展示の最初に見た誂えと刀身を、両方見られて僕は幸せだった。

感動に浸った僕は、ミュージアムショップで家康も食べた?と伝わる肉味噌カレーと、戦場で食べたと伝わる?「天下人用ラーメン」と銘打たれたイエヤスラーメンを買っていた。
散歩のついでに来たのに、なんだか遠くへ旅したような気分に包まれた。











