
あの日、江南の田んぼ道を抜けて、勲碧(くんぺき)の酒蔵にたどり着いた。
春の空気に包まれて、手にしたのがこの一本──活性にごり酒「しゅわ2」。

祭りの熱狂から数日。
冷蔵庫の奥で静かに眠っていたその白い瓶を、ついに開けるときが来た。
封を開ける前の儀式──この時間がたまらない
薄いスカイブルーの瓶に、にごりの白が沈殿している。
静かに瓶をかたむけると、にごりがふわりと舞い上がり、まるで雪解け水のように瓶全体を染めていく。

一度戻して、またゆっくり上下に回す。急いじゃいけない。
自分の手で、飲むための“最高の状態”を作り上げるこの時間が、もうたまらなく好き。
一瞬の緊張──開栓、そのとき!

吹き出すかもしれない。
だから流し台の上で、ゆっくり、そっと。
栓を少し開けた瞬間、ふわりと広がったのは、甘酒とヨーグルトを混ぜたようなやわらかな香り。
……同時に、にごりが瓶の口までぐいっと迫ってくる!

あぶない!一度栓を閉じる。
呼吸を整えて、再トライ。今度は、無事に吹き出すことなく開いた。
この、炭酸と香りのせめぎ合い──もうこの時点でテンション爆上がり。
一口目──これは、飲む春風だ。

グラスに注がれる液体は、真っ白でとろり。白いにごりというか、「旨み」がグラスにただよっている。
まさに、にごり酒の“濃厚”と“やさしさ”を絵に描いたようなビジュアル。
そして、一口。
舌に走るシュワシュワの刺激。目が覚める。

甘酒のようなやさしい甘みが広がって、そこにふわっと、リンゴのような爽やかな味が駆け抜ける。
熟成された甘さと爽やかな香りを生み出すM310酵母が、最高の仕事をしてくれたのか──これはフルーツ?いや、日本酒だ。

そして最後に、しっかりと米の旨みがどしんと背中を支える。
炭酸のポップな軽さ、甘みのハーモニーを奏でるフルーティーさ、米のベースラインのような安定感。
この三重奏が、春の田園を走り抜ける風みたいに、体を通り抜けていく。
つまみとの対話──「ブリあぶり」がやばい

さて、今日の相棒は…
ガスバーナーで軽くあぶった「ブリのあぶり」。
脂がパチパチッと焦げる音だけで、もう、よだれが出る。
ひと口。
脂が甘くとろけて、香ばしさが鼻から抜ける。
そこに「しゅわ2」を流し込むと──

爽やかな炭酸と甘みが、脂のコクをすーっと洗い流しながら、最後にまた旨みでハグしてくれる。
まさに、ステーキと赤ワインの関係性。いや、それ以上。
この時点で、心の中で誰かが叫んでた。
「これは……幸せだろ!」って(笑)。
飲んでも飲んでも、飽きない。いや、溺れたい。

にごり酒って、後味が重いようなお酒のテイストが強すぎる印象がある。
でも、「しゅわ2」は、華やかで、軽やかでいながら、ちゃんと骨がある。
口の中で小さな発泡がポンポンと弾けるたびに、味わいのレイヤーが変わっていくのが面白い。

まるで、穏やかな午後にふと吹いてくる春一番のような、気まぐれでやさしいお酒。
いかん。
このままだと、気づいたら4号瓶が空になってるやつだ(笑)。
この一本は、江南の小さな旅を思い出してくれた。

これは、「あの場所」でしか出会えなかった春の記憶であり、自分の手で作った“最高の状態”を味わう喜びであり、そして──
うまいものと向き合ったときの、小さな感動そのものなんだ。
ありがとう、勲碧。
この「しゅわ2」は、“旅の続きを飲む”という体験そのものだった。











