
春の大曽根には、美味しい「猛獣」がいる。
大曽根の誇りとも言っていい老舗酒蔵、金虎。ここは春になると、ちょっと特別な一本を解き放つ。
にごり酒と梅酒を合体させた新感覚の和酒カクテル「Pinky Tiggy(ピンキー・ティギー)」。
ピンクの虎である。
毎年この時期になると、僕は少しソワソワする。
「そろそろ出るんちゃう?今年のピンキー、もうおるかな?」なんて思いながら、酒屋やコンビニをついのぞいてしまう。
そんな時は、大曽根駅の目の前にある佐野屋に行けばいい。金虎の全てがここにあると言っても過言ではない。

もちろん、今年もいた。ピンキー・ティギー、無事に捕獲である。
こういう春限定の酒って、見つけた瞬間にテンションが上がるんだよね。しかも金虎は大曽根の酒蔵。大曽根の春には、大曽根の酒がある。その感じがまた、たまらない。
僕は両手にピンキーを抱えて家に持ち帰った。春しか会えない、お宝だからね。
栓を開けるまでがひと勝負

さて、栓を開けよう。
にごり酒だから、ここは慎重にいかないといけない。
酵母が生きているので、一気に開けると吹き出してしまう。ほんの少し開けては閉めて、また少し開ける。その繰り返し。

栓をわずかにひねると、瓶の中の白いにごりがぶわっと浮き上がってくる。あわてて閉める。落ち着いたら、また開ける。
中にいるのはピンクの虎だからね。春の大曽根の虎は、なかなかおとなしくグラスに入ってくれない。
5分ほど、開けては閉めての攻防を繰り返して、ようやくピンキーは落ち着いた。
いよいよグラスに注ぐ。
まず香りがいい。
にごり酒らしいやわらかな甘い香りに、梅の甘酸っぱい香りが重なる。これだけで、あ、美味しいやつやんってわかる。

ひと口飲む。
あぁ、春みたいに爽やか。
梅の酸っぱさは強すぎず、やさしい甘みが先にくる。そこに、にごり酒のヨーグルトみたいなまろやかさが重なる。にごり酒独特の鋭さはかなりやわらいでいて、全体としては軽やかで親しみやすい。
たぶんこれ、日本酒が少し苦手な人でも入りやすいと思う。
「日本酒ってちょっと強いんだよな」と感じる人ほど、この一本には驚くかもしれない。春のデザート酒みたいな一杯である。
さらに危険な楽しみ方

ここで、さらに面白い情報を思い出した。
喫茶はじまりの店長さんが、前にこう言っていたのだ。
「ストロベリーアイスにかけて飲んでみましたよ」って。
ピンキー・ティギーにストロベリーアイス。そんなの、美味しいに決まってるやん。
もちろん、こちらも準備済みである。
器にストロベリーアイスを入れて、そこへピンキーをドボドボと注ぐ。

同じピンク色。
春の大曽根にしかいない酒と、いちごアイスが、器の中で完璧に手を組んでいる。

スプーンを入れてひと口。
これがまた、驚くほどいい。
ピンキーの爽やかさに、ストロベリーアイスの甘みが重なる。アイスが少しずつ溶けていくことで、もともとまろやかな酒に、さらにやさしいコクが足されていく。

お互いが甘いだけで終わらず、春っぽさとデザート感がきれいにつながるんだよね。
美味い。かなり美味い。スプーンが止まらない。一瞬で器の中の宝物は消えていった。
ピンキー・ティギーとストロベリーアイスの組み合わせは、大曽根の春に出会える、かなり贅沢な遊び方だと思う。
地元の春には、地元の美味しさがある

春になると、街には桜が咲く。
その横で、大曽根にはこういう酒も出てくる。
地元の春には、地元だけの美味しさがある。
そういう宝物を見つけられるのは、やっぱり嬉しい。
気になった人は、大曽根商店街の喫茶はじまりに行ってみるといい。ピンキーの季節が終わっても、あのお店は新しくて美味しいものを、次々と生み出していくからね。
大曽根には、まだまだ楽しい発見がある。





