押し入れの奥深くをあさっていたら、26年もののシャンパンが出てきた。
その瞬間、心に浮かんだのは「これ、飲めるのか?」という不安と、「どんな味なんだ?」という好奇心が大爆発した。


1998年、ワールドカップとシャンパン
シャンパンが眠りについたのは1998年。
その年、日本が初めてサッカーのワールドカップに出場し、全国が興奮の渦に包まれていた。
僕はその勢いで開催地フランスのナントへ飛び、クロアチア戦を観戦。スーケルのゴールに涙を飲んだ、あの熱い日々を思い出す。
当時の僕はまだ若く、勢いだけで生きていた。
未来を深く考えることもなく、ただ「楽しそうだ」という理由でワールドカップ記念のシャンパンを買った。
「いつか日本がワールドカップで勝利する日が来たら、このシャンパンで乾杯しよう」と、そんな夢を抱きながら。
しかし、シャンパンは押し入れにしまい込まれたまま、すっかり忘れ去られていた。
そして、ようやく発掘されたのが26年後のクリスマスの夜。


クリスマスの夜、シャンパンとの再会
ボトルを手に取ると、懐かしさが胸に込み上げてくる。
ラベルには98年ワールドカップのデザインがそのまま残っていて、あの頃の自分がよみがえる。若く、向こう見ずで、ただがむしゃらだった自分に思わず苦笑い。
「26年ものか…果たしてこれ、飲んで大丈夫なんだろうか?」
少し不安を感じながらも、挑戦したくなるのが僕の性分なんだよね。
ジワジワとコルクを親指で押し出す。
思ったほどの圧力はなく、「ポン」という爽快な音も聞こえない。ただ静かに、26年間の時を閉じ込めていたコルクが外れた。

26年熟成の味わい
グラスに注ぐと、黄金色を飛び越えた茶色の液体があらわれた。
炭酸は完全に抜けていて、その色はまるでウーロン茶。
香りをかいでみると、華やかさはなく、代わりに甘酸っぱくも深いウイスキーのような香りが立ち込める。
ひとくち飲む。
これは完全に「シャンパン」ではない。
しかし、シェリー酒や熟成された日本酒を思わせる深みとまろやかさが広がる。
「なるほど、これが26年ものの味か」と思わずうなってしまう。
美味しいかと聞かれると、正直に言えば「普通のシャンパンとしては微妙」だ。でも、「26年間の時をまとったお酒」としては感慨深いものがある。
飲み進めるうちに、記憶の中のフランスがよみがえる。
ナントのスタジアムの熱気、ワインをたらふく飲んだパリの夜、そして朝食べた塩味だけのサンドイッチ。それらが、このシャンパンの一滴一滴に溶け込んでいるように感じられる。

時間がもたらすもの
26年もののシャンパンを飲みながら、ふと思う。
50歳を過ぎた僕自身も、こんな風に深みのある人間になっているのだろうか?
「さっぱり熟成しないな、自分」…ため息とともに、乾杯!(笑)
こうやって過去を振り返り、想いにふける時間が持てたのは、クリスマスの夜がくれたプレゼントなのかもしれないね。




