
ギャラリーとか、ZINEとか聞くと、少し身構える。
なんだか詳しい人だけが楽しむ世界のようにも思える。
けれど、大曽根商店街には、そんな身構えをスッとほどいてくれる場所がある。
「さくらギャラリー」
桜色の鮮やかな建物に入り半地下へ降りる。そこは、芸術や文学がごったがえす小宇宙になっている。
大曽根の半地下に広がる、ZINEの小宇宙

5月20日から個人で出版する本「ZINE」の展覧会が始まっている。
その名も「OZONE ZINE -ぞねじん-」である。
だいたい初日は作家さんが在廊する。お話を聞いてみたいという思いもあって、足を伸ばしてみた。
夏のような暑さに包まれたこの日。涼しげなさくらギャラリーには、70人近い作家による100以上の作品が展示されていた。
ギャラリーの方によれば、ZINEとは「ノージャンルで、好きな人が好きなように作るもの」らしい。

なるほど。
そう言われて見渡すと、たしかにジャンルの境界線がない。
文庫本のようなものもあれば、写真集のようなものもある。絵本のようなものもあれば、作品集のようなものもある。
作家志望の人が、自分を知ってもらう営業ツールとしてZINEを作ることもあるという。
見てみれば、文庫本のようなサイズに字がぎっしりと詰め込まれた、本格的な本のような作品もあった。
「好きな人が、好きなように作る」
この自由さが、まず面白い。
小さな本に、作った人の熱が詰まっていた

その中で、ふと手に取ったのは、指でつまめるくらい小さな本だった。
ピンクの表紙に、ネコの可愛いイラストが描かれている。
その時、偶然にもその作者のErickさんが姿をあらわした。
「これ、豆本っていうんですよ」
そう教えてくれた。
可愛らしいネコの絵にまつわる裏話も聞かせてくれた。
「喫茶はじまり」の上にある猫カフェの子がモデルだとか。目つきは鋭いけれど、憎めない表情のネコの日常が、ユーモラスに描かれている。

ネコの豆本の近くには、喫茶はじまりの店長さんの作品も並んでいた。
見本をパラパラとめくってみる。そこには、喫茶はじまりの「始まり」の物語が描かれていた。
店長さんらしい熱い想いがほとばしっていて、はじまりファンの僕としては「こりゃ買わなかんでしょ」と。
店長さん、忙しい中よくこれだけ作りますよね。そのバイタリティーに、思わずのけぞってしまった。

僕が思わず唸ってしまったのは、銭湯を紹介するZINEだった。
銭湯は裸で入る場所。当然、中の写真を気軽に撮ることはできない。
その「写真を撮れない」という制約を逆手にとって、銭湯を上から見た図で描いていた。
これが、めちゃくちゃ面白い。手描きの持つ温かさやパワーが伝わってくる
俯瞰図の中に湯気のたつ浴槽の空気感まで詰まっているようで、時間を忘れて見入ってしまったね。
見るだけのつもりが、作る側の景色が見えた

ZINEというのは、出版社を通さず、個人が自由に作る小さな本のことらしい。
本を手作りするなんて、とてつもなく手間がかかるものだと思っていた。
ところが今では、アマゾンにデータを置いておけば、注文が来た時に自動で製本して、発送までしてくれるとか。
なるほどね。
誰でも作家になるチャンスはあるってことか。

ZINEは、その人のこだわりを好きなだけ詰め込める。
街のことでもいい。
猫のことでもいい。
銭湯のことでもいい。
自分が見てきたもの、好きでたまらないもの、どうしても形にしたいものを、小さな本にして置いておける。
なんだか、僕のブログとも相性が良さそうだ。
見るだけのつもりで来たのに、気づけば少しだけ「作る側」の景色を想像していた。
こういう小さな本なら、自分の好きな街のことも、走った日のことも、酒を飲んだ夜のことも、形にできるのかもしれない。
いつかは僕も、なんて思ったりしたね(笑)
大曽根に人が来る未来

気になったZINEをあれやこれやと買い込んで、ギャラリーを出た。
僕と入れ違いで、遠くからこの展覧会を目当てに大曽根へ来たという方が訪れた。
大曽根に来てくれる。
それだけで、なんだか嬉しかった。
大曽根は、通り過ぎるだけの街じゃない。
さくらギャラリーの半地下には、作った人の熱が詰まった小さな本が集まっていた。
そして、その小さな本を目当てに、誰かが大曽根へやって来る。
大曽根の未来って、面白いものが集まる場所のような気がしてきた。
◆面白いが集まる場所:行きつけのお店から発見が連鎖する。大曽根商店街のさくらギャラリー「さくらポ祭り」





