
日本文学の最高傑作を、僕は舐めていたようだ。
大曽根にある徳川美術館で開かれている、源氏物語絵巻展。
「行けば、サクッと中に入れて見られるんちゃう?」
そんな、だいぶいい加減な気持ちで徳川園へと向かっていた。
いつもなら静かな散歩スポットの徳川園。だけど今日は違っていた。
黒門の前には、出入りするたくさんの人の波、波、波。
黒門の先に「60分待ち」の現実

徳川園に入り、美術館の前まで行くと、「60分待ち」と書かれた看板を掲げている人がいた。
「えっ、まじか!」
当日券の販売ブースでも、「1時間待ちですけど、よろしいですか?」と丁寧に確認される。
ただいまの時間は午後2時半。

サクッと見て、夕方からの仕事に間に合わせようという目論見は、見事に外れてしまったようだ。
僕は源氏物語を舐めていたね。
日本で最も親しまれている文学作品だよ。その絵巻が、修復を終えて見られるんだよ。
そりゃあ、人も集まるよね。
世界中から集まる源氏ファンたち

周りを見渡すと、スーツケースを引いてる人の姿もあった。タクシー乗り場をスタッフに訪ねる人もいる。耳をすませば、外国語もチラホラと聞こえてきた。
日本全国、いや世界中から、源氏物語ファンが集まってきているようだ。
舐めたらあかん!
この展示を見るためには、一日休みを取って、万全の体制を整えて行かねばならないようだ。僕みたいな「散歩ついでに寄ってみました」なんてもってのほかである。
残念ながら、今日はあきらめるしかない。また今度、休みの日にちゃんと出直すことにしよう。
手ぶらでは帰りたくない……売店へ

ただ、このまま手ぶらでは帰りたくない。
そこで、売店をのぞいてみることにした。
冷蔵庫の中にいたのは、徳川家の家紋である三つ葉葵の御紋がドーンと描かれたパウチ。中に入っているのは、オレンジ色のゼリーだ。
歴代の尾張藩主たちも飲んだであろう、由緒正しきみかんゼリーである(多分違う)。

甘いもので、散歩の疲れと、空振りに終わった観覧計画への落胆を癒したいからね。みかんゼリーを買うことにした。
口に入れると、やさしくも深い甘みのするゼリー。甘みがゆっくりと後まで残るようで、余韻まで美味しくいただけた。
行列と待ち時間のリアル

ゼリーを味わったあと、売店の方に話をうかがってみた。
なんと、源氏物語絵巻展を見に、朝から行列ができているとのこと。僕が足を運んだ午後2時半くらいの時間帯が、一番空いてるそうだ。
で、それでも「60分待ち」。
さらに追い打ちをかける事実。土日は、なんと3時間待ちだったそうな。
恐るべし!源氏物語人気。
ただ、こんなに人がいても、夏ごろに開催されていた刀剣展と比べると、まだ少ないのだとか。
徳川美術館、すごいよ。こんなすごい美術館が、大曽根にあるなんてね。
この喜び、感動を、大曽根民としてもっともっと味わわないと。
そう感じた、冬の始まりの午後だった。





