
ペンを置く。カメラを持つ。撮る。カメラを置く。もう一度ペンを持つ。
この動き、地味〜にめんどくさい。
仕事でメモを取っていると、資料を写真で残したくなる場面がよくある。右手でペンを走らせている最中に、「おっと、ここは撮っておこう」となるたび、いちいち持ち替えだ。
ある日、ふと気づいてしまった。
これ、右手にペン。左手にカメラで解決するんじゃないか?
持ち替え地獄に終止符を打ちたい
僕は右利き。
でも、カメラだけはずっと「左手で扱いたい」と思っている。
だってその方が効率いいじゃないか。右手は書く。左手は撮る。メモと写真撮影の二刀流である。なんとも無駄がない。ちょっと仕事ができる人っぽい。
そこで思った。
「左利き用のカメラぐらい、さすがにあるだろう」
探してみた。
……ない。
全然ない。影も形もない。まるで最初からそんな発想は存在しなかったかのように、この世から消え去っている。
いや、正確には一度だけあった。
時は1989年。僕が高校生だったころ。縦グリップで名を馳せた京セラの名機「サムライ」に、左手用モデルが存在していたらしい。
あったんかい。
しかも、そんな面白そうなものを一度は世に出していたのに、その後は続かない。サムライ以降、左手カメラは歴史の彼方へ消えていったようだ。
昔はあったのに、なぜ消えたのか

なんでなんだろう。
考えてみた。
もしかすると、右利きの人間が左手でカメラを扱うのは、思ったより難しいのかもしれない。だったら市場はかなりニッチになる。メーカーがわざわざ作らないのもわかる。
でも、それって本当なんだろうか。
気になって、写真を趣味にしている左利きの友人に聞いてみた。
「利き手じゃない右手でカメラ扱うのって、不便じゃない?」
返ってきた答えは、驚くほどあっさりしていた。
「全然」
……だよね。
そりゃそうだ。カメラ操作の肝は、まずシャッターを押すことだ。もちろん細かい設定まで突き詰めれば話は別だろうけど、普通に撮るぶんには利き手じゃなくても何とかなる。というか、なってしまう。
つまり、左利きの人たちは、右手用しかない世界に普通に適応しているわけだ。
強い。強すぎる。
だったら、左手用カメラって左利き専用の道具じゃなくて、右利きにも需要があるんじゃないか?
少なくとも、僕にはある。
困っているのは、むしろ右利きの僕だった

仕事でメモを取りながら資料を撮りたい時だけじゃない。このブログを書く時にも、左手カメラがあったらいいのにと本気で思う場面がある。
特に食レポだ。
箸で料理を持ち上げた写真。「ほら見て、この照り!」「この断面!」みたいな、あのやつ。
あれを撮るのが、めちゃくちゃ難しい。

右手で箸を持つ。すると、カメラは左手で持つしかない。ここまではいい。
世のカメラはだいたい右手で使う前提でできている。なので左手で持つと、いきなり無理が出る。
まず、持ち方が変になる。逆手みたいな妙な姿勢になる。次に、ズームレバーが変なところに当たる。気づけば勝手に望遠。さらに、シャッターボタンを押したつもりが電源を切ってしまう。画面が真っ暗になる。
料理は冷めていく。僕は焦る。
やっと撮れたと思ったら、今度はピンボケ。あるいはブレブレ。構図もひどい。箸で持ち上げたはずの主役がフレームの隅で瀕死になっていることすらある。

そんな写真を量産しながら、何度も撮り直す。
そしてようやく「これなら使えるか……」という一枚が撮れたころには、僕の中で食レポの半分は終わっている。
写真を見てホッと一息ついて、そこからようやくご飯にありつくのだ。
本来なら、熱々のうちに「うまっ!」っていきたい。なのに現実は、「ちょっと待って、今ズーム戻すから」「あ、電源切れた」「うわ、またブレた」である。
なんなんだこれは。
食レポなのか、左手デバイス適応訓練なのか。
食レポ現場は、毎回わりと戦場である

食レポに限らないんだよね。
右手は空けておきたい場面って、意外と多い。メモを書く。箸を持つ。何かを指さす。物をどかす。資料をめくる。そういう日常の細かい動作と、写真を撮る動作は案外一緒にやってくる。
だから僕は思っている。
ペンは右。カメラは左。この二刀流こそ正解なんじゃないかと。
たぶん同じことを感じている人、特にライターやブロガーの中には、ちょこちょこいるんじゃないだろうか。声に出していないだけで、「左手で自然に使えるカメラ、あったらいいのに」と思っている人が。
ペンは右、カメラは左。その未来をください

カメラメーカーさん。本格的なものじゃなくてもいいんです。トイカメラ程度でもいい。
左手用、作ってくれませんか?
……いや、待てよ。
もしかして必要なのは、左手用カメラじゃないのかもしれない。
僕が左手で箸とペンを使えるようになれば、全部解決するのでは?
そっちの方が、開発費ゼロだ。ただし、完成までに何年かかるのかは知らない。




