母の喜寿祝いの日、父が救急搬送。親父!それ、未来の俺だって

2026-03-24

30年後の僕の姿を見たようだった。

先日、母の喜寿(77歳)を祝う食事会に行ってきた。

兄の発案で、金屏風が飾られた豪華な部屋に懐石料理と飲み放題。母は紫のちゃんちゃんこを着て、満面の笑み。

「次は2年後に88歳になるお父さんの米寿祝いだね」

そんなふうに笑い合える時間が、なんともありがたかった。

家族がこうして集まれるのも、あと何度あるんだろう。この瞬間を心に刻んでおこうと、僕も精一杯楽しませてもらった。

顔色ひとつ変えない、いつもの父

父は僕と同じで大の酒好きである。

歳を取ったとは思えないほど、顔色ひとつ変えずに飲んでいた。僕が酒を注文するたびに一緒に頼んで飲んでいる。つまり、30歳若い僕と同じ量の酒を飲んでいたわけだ。

そのうえ、相変わらず甘口の日本酒にはケチをつけたりしてね。

「ああ、いつもの親父だな」

そんなふうに見えていた。まさかこのあと、あんなことになるとは思いもしなかった。

兄と飲み直していた、そのとき

宴も終わって、兄と2人で飲み直すことにした。

子どものころを思い出して、ふざけ半分で兄に殴りかかったりしてね。

いい歳したおっさん2人が、妙に楽しくなっていた。祝いの余韻もあったんだろう。酒は進むし、気分も上がる。レモンサワーを片手に、すっかりご機嫌だった。

救急車で運ばれた、とLINEが来た

そこに、空気を一瞬で凍らせる連絡が入った。

母から連絡をもらった甥っ子から、兄にLINEが来たのだ。

父が救急車で運ばれた、と。

急性アルコール中毒。

その文字を見た瞬間、レモンサワーを持つ手が震えた。

さっきまで笑っていた空気が、スパッと切れた。頭の中で、宴会の光景が一気に巻き戻される。

僕と同じペースで飲んでいた父。顔色も変えず、いつも通りに酒の文句まで言っていた父。

そりゃ、飲み過ぎだ。

「飲ませすぎたな」と兄と頭を抱える

兄と2人で顔を見合わせた。

「飲ませすぎたな」

ほんと、そのとおりである。

こっちが注文するたびに父も飲んでいた。

僕が少しセーブしていたら、父もそこまで飲まなかったかもしれない。調子に乗ってガバガバ飲んでいた兄と僕は、そのまま反省会に突入である。

止めても飲む。それもまた父である

とはいえ、話しているうちに、もうひとつ別の現実も見えてきた。

「飲むなと言っても、飲むんちゃう」

それもまた、そのとおりなのだ。

父は、そういう男である。

若いころから筋金入りの酒飲みで、母はずっと泣かされてきた。今回だって、心配が半分、呆れが半分だったに違いない。

兄と顔を突き合わせながら、僕は苦笑いした。

これ、未来の姿かなぁ、と。

30年後の僕も、きっと同じだ

30年後の僕も、きっと酒好きのままなんだろう。

調子に乗って飲みまくって、飲み過ぎたと反省するのは次の日まで。少し時間がたったら、また何事もなかったように飲み始めるんだろう。

そして、たぶん最後の日にも酒を飲んでいる。

そんな映像が、妙にはっきり見えてしまった。

母の返事がすべてを知っていた

しばらくして、父は飲み過ぎ以外に異常なしということで、その夜のうちに帰宅。家でグデーッとしていると母から連絡が来て、僕もようやく胸をなで下ろした。

そこで母にLINEを送った。

「ノンアルで長生きしてもらいましょう」

すると、こう返ってきた。

「それは無理でしょうね。何日たったら飲みだすか………」

さすが僕の父である。

なんの反省もなく、また酒を飲み始めるのだろう。そこに呆れながらも、僕は妙に納得してしまった。

ああ、血はつながってるな、と。

30年後、調子こいて酒を飲んだ僕が、誰かに同じように心配されている気がする。

できれば救急車だけは勘弁してほしい。

とはいえ、そのときの僕もきっと、懲りずにグラスを持っているんだろうな。

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