
ただゼッケンを受け取りに行くだけ。
本来なら、それだけの話である。
でも、バンテリンドームに足を踏み入れると、不思議と気持ちが切り替わる。
「あぁ、今年もこの季節が来たんだな」と思う。
大曽根に住んでいると、バンテリンドームは目と鼻の先にある。
なのに、普段は案外行かない。僕にとっては、この名古屋シティマラソンこそが、年に一度のドーム詣でみたいなものだ。
湿気がジトッと。すでに夏の気配
いつもなら、この時期は風が強い。いかにも3月らしい冷たい風に吹かれるイメージがある。
ところが、今年は違った。
風がない。空気がやわらかい。しかも、ほんのり湿気まで含んでいる。春を通り越して、少しだけ夏の気配すら感じるような暖かさだった。
本番もこんな天気だったら、かなりありがたい。
そんなことを思いながら、ランナー入り口となる1番ゲートへ向かう。

スマホひとつで受け付けへ
受け付けに必要なのは、スマホに表示したQRコードだけ。
紙もいらない。ハガキもいらない。今どきらしく、ずいぶん身軽なものである。
ただし、スマホを忘れたら終わる。
便利さってのは、たいていこういう小さな怖さもセットだ。

ゲートに近づくと、周りにはランナー、ランナー、またランナー。一応、僕もランナーだ(笑)
当たり前なんだけど、ここまで見渡す限りランナーしかいない空間って、ちょっと面白い。しかも皆、なんとなく締まって見える。
気のせいかもしれないけど、「あ、この人たち走る人たちなんだな」という空気を全身からまとっている。
僕もその列に混じって、スマホを取り出した。
去年の受け付けはプレマラソンだった

そのとき、ふと思い出したのが去年のこと。
受け付けを済ませ、ゼッケンと参加賞Tシャツを受け取って、「よし終わった」と思ったら、なぜかバンテリンドームをぐるっと一周するような動線になっていた。
「なんでこんなに歩かされるんだ?」と軽くうんざりした記憶がある。
ランナーに余計な距離を歩かせてどうする。あれは、ちょっとしたプレマラソンだった。
だから今年も、どうせまた歩かされるんだろうなと思っていた。
今年は出口が目の前にあった



ところがである。
受け付けは、いつもと同じであっさり終わった。
QRコードを見せて、ゼッケンとTシャツを受け取る。そこまでは去年と同じ。問題はその先だ。
出口が、目の前にあった。

え、もう出られるの?去年のあの遠回りは何だったの?一瞬、笑ってしまった。
たぶん、クレームがたくさん入ったのだろう。あるいは事務局の中で、誰かまともな人が「これはおかしい」と気づいたのかもしれない。
理由は知らないけど、改善されていた。
やればできるじゃん。

ゼッケンやTシャツと一緒に、小箱に入ったえびせんが3枚入っていたのも、なんだか嬉しかった。
名古屋の味を、こうやって県外や海外から来た人たちにも楽しんでもらえたらいいよねって思う。
すぐ出られると、今度は出たくない

こうなると人間は勝手なもので、今度はすぐに外へ出るのが惜しくなる(笑)
さっさと帰れるようになったらなったで、「いや、もうちょっとドームの中にいたいな」と思ってしまうんだよね。
せっかくだから、アリーナの方へ足を伸ばしてみた。
すると、ジャジャーン!豪華絢爛なマラソンエキスポが始まっていた。
ウェア、アミノ酸、テーピング用品、その他いろいろなランニンググッズ。さらにグルメ系のブースまで並んでいて、一気にマラソン祭りの顔を見せ始める。
あぁ、これだよねと思う。こういう華やかな空気を浴びることで、体の中に少しずつマラソンの神様が降りてくるという感じだね。
今日は受け付けだけ。エキスポは、明日のお楽しみにしておこう。
まだ走っていないのに、もう始まっていた

そうやって2番ゲートから外へ出た。
入り口のすぐ隣。去年とはえらい違い。ほんと、やればできるじゃん。
ドームを出たころには、もう気持ちは受け付け前と少し変わっていた。
ゼッケンを受け取ったからなのか。ランナーだらけの空気にあてられたからなのか。エキスポの賑わいを見たからなのか。
理由ははっきりしない。
ただ、まだ走ってもいないのに、もう名古屋シティマラソンは始まっていた。
明日もまたドームへ行く。そして、その次はいよいよ本番だ。
この3日間、まるごとマラソンを楽しもうと思う。










