あのマクドナルドに、奇跡の松が立っていたなんて。
そんなこと、ついさっきまで僕も知らなかった。
いつもお邪魔してる大曽根商店街の喫茶店。

ふと立ち寄ったある日、僕は思いがけない出会いをした。
細長い店内の座席に腰かけて、アイスコーヒーとあんこをいただく。
そのとき、ひとりのおじいさんがお店にやってきた。
この商店街でずっと暮らしてきたという、気さくで穏やかな老紳士。
話すうちに、彼がこのあたりのことにものすごく詳しいことがわかってきた。
そして、僕の史跡センサーが作動していたのを感じ取ったのか(笑)、こんな話を教えてくれた。
「そこのマクドナルに、面白い松の木が生えているよ」
え?マックに松?
そんなワードを聞いたら、もう落ち着いてコーヒーなんか飲んでられない。
一気に飲み干し、僕はその“面白い松”を見に行くことにした。
奇跡は、すぐそこのマックにあった

国道19号。
車が列をなして走り抜けるこの大通りに、そのマクドナルドはある。
特に景色の変わり映えもしない、ちょっと殺風景な場所。
だけどその駐車場に、ドンとそびえる一本の松。

3階建てのビルくらいはある、立派な大木が立っていた。
なんで今まで、気づかなかったんだろう。
根元には、札がかかっていた。
三葉の松。

…三葉?
普通、松の葉は2本1組で生えてくる。
この木も、そうだと思ってた。
けれど、札の言葉に従って葉をよく見てみる。

少し高い位置だったけど、背を伸ばし、目を凝らして──
いち、に、さん。
ほんとに、3本でワンセットになってる。
この松は、日本では本来存在しないと言われる“三葉”の松だった。
奇跡の松には、金運アップのご利益があった
帰ってから調べてみた。
三葉の松は、突然変異で生まれた、極めて稀少な存在。

しかも、三本の葉には金運のご利益があるとされている。
特に、落ちた黄金色の松葉を身につけると、運気がぐっと上がるんだとか。
もちろん僕は──
その場で落ち葉を拾って、ありがたく持ち帰った。

財布にそっと忍ばせたのは、言うまでもない(笑)
駐車場を犠牲にして残された松
札には、古い写真が添えられていた。
松の後ろに、大きな門構え。

なるほど、ここはかつて武家屋敷の庭だったらしい。
この松は、その庭木だったというわけだ。
時が流れ、1989年、この地にマクドナルドが建つことになった。
本来なら、この松は伐採か、別の場所に移される予定だったそうだ。
でも、マクドナルドは違った。
松をそのまま残すという判断をしてくれたのだ。
駐車場を1台分、犠牲にしてまで。

その気づかいが、なんだかじんときた。
よく見たら、たしかにそこだけ駐車スペースが削られていた。
いままで、殺風景の象徴だと思ってた大曽根のマック。
ちょっとだけ見方を変えたくなった。
老紳士に伝えたい「ありがとう」

歴史を語る人がいて、それを守る人がいる。
そして、こうして教えてくれる人もいる。
あの喫茶店で再び老紳士に出会えたら、「楽しいお話しをありがとう」って言いたい。
コーヒーは、もうちょっと味わって飲もうと思う。
松の木は逃げないからね(笑)










