
「大曽根で美味しいお蕎麦を食べたい」
そんなあなたのために、この記事を書きました。
地元・大曽根の街に長く残ってきた店で、落ち着いて、ゆっくり食べたい日。
そんな日に思い出したのが、お蕎麦屋さんの「八千代(やちよ)」だった。
明治40年創業。大曽根に残る老舗蕎麦屋「八千代」

地下鉄大曽根駅の3番出口から西へ。少し足を伸ばすと、ベージュ色の壁に、年季の入った木の看板が見えてくる。
創業は明治40年。
つまり、120年近い歴史がある。
かつては大曽根商店街にお店を構えていたが、アーケード撤去のタイミングで今の場所に移ってきたという。
大曽根の街を見続けてきた、老舗中の老舗である。
引き戸の先に広がる、音と香りのある店内

入り口は、建物の中の少し奥まったところにある。
引き戸を開ける。
天ぷらが揚がるジュワジュワという音と、香ばしい匂いがふわっと流れてきた。
BGMは流れていない。
その代わり、お蕎麦を楽しむお客さんたちの楽しげな話し声が、店の中をやわらかく包んでいる。
「いらっしゃいませ〜」

柔らかな声に案内されて、お座敷席へ。
席は、お座敷が2つ、テーブルが6席、個室が1つ。
開店早々の11時半なのに、すでに店内はほとんど満席だった。
この時点で、もう分かる。
ここは、地元の人にちゃんと愛されている店だと。
名物「鴨せいろ」は、鴨が飛んでくるような迫力

頼んだのは、ここの名物「鴨せいろ」。
しばらくすると、ざるに盛られたお蕎麦と、湯気の立つ鴨のつけ汁がやってきた。
さっそくお蕎麦をくぐらせて、ひと口。
う、うまい。
細いお蕎麦なのに、ちゃんとコシがある。

そこへ、鴨の濃い旨みが一気にくる。
まるで、鴨がバサバサとこっちに向かって飛んでくるような味だった。
迫力がある。
上品なのに、力強い。
蕎麦を食べているはずなのに、口の中で鴨が羽ばたいている。
一緒に食べていた妻が、興奮気味にこんなことを言っていた。

「余った汁を持って帰りたいよ」
分かる。
このつけ汁、持って帰りたくなる。
家で白ごはんにかけても絶対にうまいし、うどんを入れても絶対にうまい。なんなら、この汁だけで晩酌できそうな気すらする。
八千代が120年もの間、大曽根で愛されてきた理由が、よく分かる。
ただただ、美味しいのだ。
山椒をかけると、初夏の風が吹く

お膳には、山椒が入った瓢箪(ひょうたん)も乗っていた。
栓を開けると、初夏を彩るような透き通った香りがする。
パラパラっと鴨のつけ汁にかけてみる。
すると、味がまた変わる。
ピリッとした刺激と、爽やかな香り。
鴨のつけ汁は、濃いめの味。いくら美味しくても、濃い味は少しずつ口が慣れてくる。
そこに山椒を少しかけると、あら不思議。まるで、新しいお椀が出てきたような錯覚に陥る。
さっきまで力強く飛んできていた鴨に、初夏の風が吹く。

濃厚なのに、重くなりすぎない。
この変化が楽しい。
しかも、鴨がたっぷり入っている。
食べても食べても、底から鴨が湧いて出てくるみたいで、お腹いっぱいになるまで「これでもか!」と楽しませてくれる。
蕎麦湯を入れると、鴨が飛び去る余韻になる

蕎麦を食べ終えて、「ふぅ」と一息ついていると、お店の方が蕎麦湯を持ってきてくれた。
とろみのある、白濁した蕎麦湯。
それを、残った鴨のつけ汁に入れる。
グイッと飲んでみる。
また、味が変わった。
さっきまで、鴨はこっちに向かって飛んできていた。濃くて、力強くて、口の中で羽ばたいていた。
ところが蕎麦湯を入れた瞬間、その鴨が夕日の彼方へと飛び去っていく。
味が薄くなるのではない。余韻になる。

あれだけ力強かった鴨の旨みが、やさしくまろやかな味に変わっていった。
そのままで食べる。
山椒をかける。
蕎麦湯を入れる。
ひつまぶしみたいな大きな変化ではない。だけど、味の向こう側に見える景色が少しずつ変わっていく。
その小さな変化を楽しむ余裕が、八千代の鴨せいろにはある。
大曽根で落ち着いてお蕎麦を食べたいなら八千代へ

大曽根駅から歩いて行ける距離で、落ち着いて美味しい昼ごはんを食べたい人には、かなりオススメ。
開店直後から混んでいたので、ゆっくり食べたいなら少し時間に余裕を持って行くのがよさそう。
大曽根で美味しいお蕎麦を食べたい。
老舗の空気を感じながら、ちゃんと満足できる昼ごはんを食べたい。
そんな日には、八千代の鴨せいろがある。
120年続く伝統の味。
どう?
食べてみたくなったでしょ?
八千代に来たくなったら、大曽根に引っ越しておいでよ(笑)
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