
スーパーの日本酒売り場の片隅に、夏を感じさせる一本が静かにたたずんでいた。
透明なビンに、突き抜ける青空のようなスカイブルーのラベル。薄く鯱の模様が描かれ、金色の文字で「金鯱」。
名古屋ではどこでも売ってる、お馴染みのお酒である。しかし、たぶん、「全国的には名古屋らしさを体現する幻のお酒なんだろな」とか思ったりする。
愛知らしい質実剛健すぎるネーミング

「金鯱 山田錦 吟醸原酒生貯蔵酒」
愛知県知多半島・常滑(とこなめ)に拠点。創業350年以上で、ミツカンと並ぶ「知多の老舗」の大手蔵、盛田酒造が放つ夏の一本である。
ネーミングは愛知県人らしいのか、とても質実剛健で単刀直入。わかりやすいといえばわかりやすい。
でも、せっかく爽やかなパッケージなんだから「青鯱」とか「夏の水しぶき」とか、ちょっと色気のある名前でも良かったんじゃないかな…なんて思ったりする。
いざ、栓を開ける

ま、ネーミングはいいとして。盛田さんが丹精込めて作ったお酒、僕はただ楽しむだけ。
栓を開ける。
スクリュー式ではなく押し込み式の栓だ。手の力だけでは爪がもげるので、マイナスドライバーのようなものでテコの原理を使うといい。
開いた瞬間、甘さと鋭さの両方が香り立つ。グラスに注ぐと無色透明に見えるが、ほんのり黄色がかっている。
一口グビリ、その正体は

一口グビリ。
生酒らしい、押しの強いアタック。
その後ふわりと甘みが広がる。ただ、吟醸らしい花やフルーツ系の甘みとは少し違う。なんというか…元気になる甘み。うーん、言葉で表すのは難しい(笑)。
喉越しには最初のアタックが戻ってきて、同時に米の旨みがふくらむ。
日本酒らしいキレも感じながら、思わずグイッと飲み干す。まさに「日本酒の美味しい要素が全部詰まった一本」だ。
思い出す、あの夏の日

グイグイ飲んでいると、心はおばあちゃんの家へ飛んでいた。
山の中ほどの家、お盆に泊まりに行ったあの日。脇を流れる用水路には、山から湧き出る水が流れ、畑でとれたキュウリやトマト、スイカを冷やしていた。
僕たちはそこに足を突っ込み、蝉の鳴き声の中、冷えたスイカやキュウリをパクリ。最高の夏の味覚だった。
あの爽快さを思い出させてくれたお酒だ。
まるでサイダーな日本酒

僕の感想を一言でまとめるなら――
「盛田酒造の吟醸原酒生貯蔵酒は、サイダーである」。
サイダーも最初に炭酸のガツンとした刺激、次に甘み、そして喉越しにキレが残る。
まさにその感覚に近い。透明感あるボトルも、夏空を映したようでサイダーっぽい。残暑の風が吹くこの季節にぴったりの一本だ。
夏の終わりを楽しむ晩酌

爽快な日本酒を飲みながら、夏の終わりを楽しむ。
近所のスーパーで手に入れられる、最高に優雅な晩酌だった。





