「桃虎祭2026」は今年も地上の楽園だった。春の金虎で酔いしれた一日

地上の楽園はここにあった。

春の日差しに包まれ、僕は19号線を北へと歩いていた。

目的地は、金虎。

そう、この日は金虎の酒蔵が開放される日。「桃虎祭」として、金虎のお酒が飲めるお祭りである。

午前11時。

蔵に入ると、すでに赤い顔をしてグラス片手に談笑する人たちでギッシリ。風もなく暖かい絶好の日本酒日和。こんな素敵な春の日に、外で日本酒を飲めるなんて、これ以上の贅沢があるだろうか。

あちこちに置かれた椅子代わりの一升瓶ケースは埋まっていた。立ち飲みで我慢するとしよう。

まずは幻の「袋吊り」から

まず、僕が選んだのは、幻の酒「袋吊り」である。

袋吊りとは、酒母を袋に入れて、絞ることなく一滴一滴垂らして溜めたもの。絞らないから雑味が入ることなく、お酒の一番美味しい上澄みだけを飲める。早い話が、最高級のお酒と言っていい。

お値段も桃虎祭で出されるお酒の中では最も高かった。チケット5枚分。「ここで飲まないと、来年まで飲めないからね」ということで頼んでみた。

美味いね。

南国フルーツのような甘い香り。口に含めば、イチゴのような爽やかな甘みが広がった。

そして、一口飲んで思い出したよ。桃虎祭にくる理由はこれだった。

まるで桃源郷のような、美味しさや楽しさ以外に存在しない世界。そんな世界観を感じさせるお酒なんだよね。

「桃虎祭が始まった」

僕にとっては、そんな思いにさせる一杯だった。

限定酒を追いかける幸せ

続々と飲兵衛たちが押しかけてくる。これは、列が短いうちにたくさん飲んでおいたほうがいいだろう。

矢継ぎ早に2杯目を飲むことにした。

お次は今日、ここでしか飲めないお酒にしよう。「桃虎祭限定」と書かれた酒母しぼり。

グラスに注いでもらうと、甘酒のような白濁としたお酒だった。酒母そのままだからね。

グイッと飲む。

ヨーグルトのようでもあり、イチゴのようでもあり、やさしくやわらかい味わい。

酒母しぼりって美味しいんだよね。世に出回らないってことは、たぶん日持ちしなかったり、同じ味を再現するのが難しかったりするんだろう。だから、この日限定でしか飲めないんだと思う。

こんな金虎の幻を楽しめるのが桃虎祭である。

酒蔵の進化がうれしい

さて、会場を歩いてみよう。

桃虎祭の楽しみは、普段は閉ざされてる金虎の酒蔵をあちこち見て回れることだ。

昨年を思い出す。人が歩くエリアと飲む場所が分かれてなくて、行き来に苦労した覚えがある。

今年はというと、しっかりと動線が確保されていて歩きやすくなっていた。

さらに、試飲会場が2つに分かれていたことも大きかった。昨年は、列が長くなってなかなか目当てのお酒にたどり着けなかった。

今年は、蔵の裏にもうひとつできたことで、列が短くなっていたんだ。さらに、蔵の裏手も開放されていて飲む場所が増えていた。

僕は思ったね。

「金虎は進化し続けている」って。

日本酒の世界って、歴史と伝統があって変わらないものだと思われがち。

実際、変わらないことに価値がある世界でもある。ただ、そこにあぐらをかかず、世の中の趣味嗜好の変化に合わせていく。そんな姿勢が桃虎祭にも現れていたんだよね。

それを見て、僕はちょっと嬉しくなった。金虎をずっと飲み続けていこうと。

初しぼりか、上撰の熱燗か

その後もグイグイ飲んでいた。金虎のお酒が一堂に会するんだからね。ここで全て飲んで味を記憶しておきたかったんだ。

金虎の中で、いちばん美味しいと思う酒はどれか。

そう聞かれたら、僕は「初しぼり」と答えるかな。

純米のどっしりした旨さと、吟醸の華やかな味わい。そのいいとこ取りみたいな酒なんだよね。

……と、そこまで言っておいてアレだけど、「上撰」の熱燗もめちゃくちゃ良かった。

上撰は、金虎の中でも一番安いお酒。暖かな日だったのに、熱燗がうまい。あったまって角が取れ、お酒本来の甘みと爽やかさが引き出された極上の熱燗だった。

安いからといって美味しくない、なんてことは日本酒には当てはまらない。安いお酒には、美味しく飲むためのコツがあるんだよね。上撰なら熱燗。新しい方程式が分かったね。

結局、どっちが上かは決められない(笑)

有り金は全部チケットになった

5杯、6杯……と飲み進める。気がつけば、有り金は全てチケットになっていた。

これ、全部飲めるんかな(笑)

酔いはしっかり進んでいた。何かにもたれていないと、立って飲んでるのはしんどくなってきたね。

さすがに全19種類制覇とはならなかった。

とはいえ、金虎で飲んだことのないお酒を重点的に飲んだから、これで全てのお酒を味わったはず。覚えてるかどうかはともかく、味は全てインプット済みとなった。

目的は達したかな。

僕は、金虎のお酒を全制覇したんだ。

「酒と泪と男と女」が沁みる

ライブステージでは、ギターデュオの弾き語りで河島英五の「酒と泪と男と女」を歌っていた。

「飲んで、飲んで、飲まれて、飲んで」

いつしか僕も、日本酒を片手に口ずさんでいた。なんだろ、この歌を聴くと涙が止まらない。

少し、飲みすぎていたようだ。そろそろ帰る時間かな。

桃虎祭は文化を生み出す装置だ

名残惜しい。そんな気持ちの中で、改めて僕は考えていた。

僕が金虎を愛するのは、地元だからというのもある。ただ、金虎を飲んでいるうちに、別の思いも芽生えているんだ。

それは、金虎はお酒を心から愛しているってこと。

商売だからお酒を作っているというよりも、文化としてのお酒を守っていこうとする気持ちがビシビシと伝わってくる。

お酒って、こんな楽しいお祭りの中心にあるじゃん。人が集い、歌い、笑い、踊って楽しむ。そういう中から交流が生まれ、文化って生まれてきたんだと思う。

桃虎祭は、まさしく文化を生み出す装置なんだ。

それを毎年、頑張って開催してくれている金虎を、僕はこれからも応援していきたい。

春の光の中で思ったこと

そうして、酒好きの楽園と化した金虎を後にした。

帰り道、目の前には若いカップルが歩いていた。2人の手には、金虎の酒瓶が握られていた。

金虎の酒文化は受け継がれていく。

春の光の中をふわふわした足取りで歩きながら、僕はそんなことを思った。桃虎祭は今年も、地上の楽園だった。

関連記事金虎「桃虎祭2026」で酒粕1.76キロ獲得。戦利品のはずが、台所で宿題になった

◆金虎の記事はコチラ

大曽根探検のよく読まれている記事
日本酒のよく読まれている記事
金虎のよく読まれている記事
最新記事