
忘れた頃に、あいつはやってくる。
そう、マラソン大会のゼッケンだ。
大会って、申し込んだ瞬間よりも、ゼッケンが届いた瞬間のほうが現実になる。
「やべぇ、全然走ってねぇ」って、急に心臓をつかまれる感じがある。
4月26日に号砲が鳴る「ぎふ清流ハーフ」。昨日、郵便受けを見ると、封筒に入ったゼッケンが届けられていた。
だいたいこういうのって、大会の1週間前くらいに届く印象がある。そこから、何の上積みもないまま当日を迎えたりする。
その点、今回は2週間以上前。まだ何発かムチを入れて、走れる体に無理やり寄せていく余地がある。
っていうか、普段から走っておけよって話なんだけど(笑)
封筒の中に、岐阜が詰まっていた

さて、封筒を開けてみる。
まず目についたのは、22ページもある岐阜観光の冊子だった。
手に持つと、ずっしり重い。
中を開くと、主要な観光地のマップや、おすすめの店の情報がぎっしり詰まっている。
マラソン大会の案内と一緒に送られてくるものとしては、かなり異例の情報量だと思う。

ぎふ清流ハーフって、走るだけじゃなく、岐阜そのものを楽しんでもらおうという色が強い大会なんだろう。
以前はゼッケンの受け渡しも前日現地で、「岐阜に泊まっていってね」という主催者の意図が感じられた。ただ、それは地元ランナーにはなかなか厳しかったようで、今は希望者には事前発送もできるようになっている。
この冊子をパラパラめくりながら、「帰りに岐阜駅で一杯やっていくか」なんて思う。
名古屋ウィメンズ&シティでも、大曽根の観光マップをそっと忍ばせたら面白いのに、とかね。
ランナー目線の、ちょうどいい気配り

さらに、ゼッケンを留めるホルダーも入っていた。
こういうの、ありがたい。
ランナーって、だいたい一番気に入ってるウェアで大会を走る。だから安全ピンを刺すのは、ちょっと抵抗がある。
かといって、わざわざホルダーを買うほどでもない。
「あればいいなぁ」くらいの微妙なところを埋めてくれる。こういう気配りは、なんだかうれしい。

一番大事なゼッケンも見てみる。
まあ、ここはいつも通りだ。
ただ、計測チップが返却不要なのは本当に助かる。ゴールしたあとはだいたい朦朧としていて、返し忘れそうになるからね。
もう一枚、入っていたもの

……と思っていたら、もう一枚、ゼッケンみたいなものが入っていた。
あれ、これ何だろう。
見てみると、絵が描いてあった。
「Never give up」という文字。そして、青と黄色の帽子をかぶった子が、「FIGHT!」と声を出している絵。
案内を見ると、どうやら地元の小学生が描いたもので、これを背中につけて走ってほしいらしい。
これを見た瞬間、ちょっと気持ちが変わった。
ランナーは、案外孤独だ

ランナーって、けっこう孤独なんだよね。
エントリーしたときはやる気があっても、日にちが近づくと、急に走る理由が分からなくなる。
当日の朝、「今日はやめてもいいんじゃないか」と思うことだってある。
けれど、地元の子どもたちが描いた絵を背中につけて走るとなると、話が変わってくる。
きっとこの絵を描いた子が、沿道で応援している。自分の絵を探しているかもしれない。
そう思ったら、走らないわけにはいかない。
もし僕がDNSしたら、この絵を描いた子は少しガッカリするかもしれない。
だったら、何があっても大会には出ようと思った。
そして背中を沿道に見せながら走りたいと思った。
もし背中越しに、ひときわ大きな声で応援してくれる子がいたら、手を振って応えたい。
そんなことまで想像してしまった。
封筒の中に、走る理由が入っていた

そのとき、ふっと思ったんだ。
ああ、僕は孤独じゃないんだなって。
届いたのはゼッケンだった。けれど、封筒の中に入っていたのは、それだけじゃなかった。
走る理由みたいなものが、もうひとつ入っていた。
……まあ、この絵をちゃんと見えるようにするために、少しゆっくり走ろうって言い訳もできるんだけど(笑)
とはいえ、子どもたちに恥ずかしい走りは見せられない。
あと2週間、ケガだけはしないように気をつけながら、着実に走っていこうと思う。
前より少し、前向きな気持ちで。









