
教わっているのに、なかなかできるようにならないことがある。
頭では分かっているつもりなのに、いざやるとうまくいかない。たぶん、上達したいと思って何かを続けている人なら、一度はぶつかる壁だと思う。
やっぱり、練習が最後にものを言うんだよね。
先生から「家で練習してる?」

毎月第2、第3金曜日は己書の日。
その日は、春の嵐みたいな土砂降りの中、幸座(講座)が開かれる大曽根商店街のオゾンアベニュー会館へ向かった。
部屋に入るなり、いつもは冗談ばかりで明るい先生が、真剣な顔でこんなことを話し始めた。
「家で練習してる?」
僕は、「筆ペンで書いて遊んだりしてますよ」と答えた。
すると先生はこう言った。

「私は、お手本をもらったら6枚書いて練習してたの。師範を目指すなら、3枚は練習してほしいな」
さすが先生。
僕が夜な夜な練習していることも、その練習量がまだ足りていないことも、見抜いていた。
幸座では、毎回4枚のお手本に挑戦する。
その4枚を持ち帰って、家でそれぞれ3枚ずつ練習するとなると、最低でもかなりの時間がいる。仕事をしながらそれだけの時間をまとめて確保するのは、やっぱり簡単じゃない。
だから結局、答えはシンプルになる。
毎日少しずつでもやるしかない。
師範の道は険しい。まあ、そりゃそうか(笑)
今の課題は、水彩だった

そんな空気で始まった今回の幸座。
「師範」という言葉が頭にちらつく僕は、先生の教えを一つでも多く吸収したかった。
特に今、僕が苦手にしているのが、水彩絵の具での色付け。
家で練習する時も、水彩は準備と片付けが少し面倒で、後回しになっていた。幸座の時しかほとんどやっていない。練習不足なのは、自分でもよく分かっている。
だからこの日は、何としてもコツを一つつかんで帰りたかった。
まずは鉛筆で下絵を描いて、筆ペンで清書する。ここは、お手本どおりに描けばいい。そこまでは大きな問題はない。
色っぽいグラデーションを描きたい

本題は、その先の水彩だった。
僕が描きたいのは、水彩らしい鮮やかで色っぽいグラデーション。
どうしてもベチョッと重くなったり、水が足りなくて縞模様が出たりする。きれいににじませたいのに、紙の上で色が思ったように動いてくれない。
どうやって描けばいいんだろう。
その時、天の声……いや、先生から声がかかった。
「まず薄い色で水を張って、そこに濃い色を乗せていけばいいですよ」
そう。
その言葉自体は、前から何度も教えてもらっていた。
なのに僕は、そこがずっとよく分からなかった。
ずっと前から教わっていた

今回は、いつもみたいに勢いで進めず、水加減そのものをちゃんと探してみることにした。
まずは、ビチョビチョなくらい水を乗せてみる。
もちろん、うまくいかない。
そこで、ティッシュを軽く乗せて水を抜いていく。紙の上に、ほんの少しだけ水が浮いているくらいまで整える。
そこに薄い色を置く。さらに、その上へ濃い色を少しだけ乗せる。
筆を洗って、今度は色のついていない水だけを含ませて、濃い色を薄い色側になじませていく。
すると――
うまくできた。
そこで初めて分かった。先生は、ずっと同じことを教えてくれていたんだ。
なんだろう。
あれだけうまくできなかったのに、教えられたとおりにやってみたら、すっと形になった。
うれしい。それと同時に、不思議でもあった。
なんで今まで、同じことを教わっていたのにできなかったんだろう。
その疑問を先生にぶつけてみた。すると先生は、あっさりこう言った。
「水加減は、コツをつかむまで難しいんですよ」
なるほどと思った。
教えてくれていたことが入ってこなかったのは、先生の説明が足りなかったからじゃなくて、たぶん僕自身がまだそこを理解できる段階まで来ていなかったからなんだろう。
今、なんとなく水加減が分かってきたということは、ようやくそこに入れたということだと思う。
練習して、ようやく意味が入ってくる
そしてもう一つ、はっきりしたことがある。
水彩の練習が、圧倒的に足りていなかった。
やっぱり、練習が最後にものを言う。
教わった瞬間に全部分かるわけじゃない。
練習を重ねて、ようやく言葉の意味が入ってくる。今回つかめたのは、水彩のコツそのものというより、先生の教えを受け取れるところまでやっと来られた、という感覚だったのかもしれない。
「水彩って、家で練習するにはハードル高いんですよ」と先生に言ってみた。
すると先生は、ニッコリ笑ってこう返した。
「広い場所いるもんね」
そこは解決策までは教えてくれなかった(笑)
師範を目指すなら、これから練習すべきはたぶん水彩だ。毎日少しずつでも、コツコツやっていこうと思う。
あとは、その水彩道具をどう広げるか。
我が家は狭い。次の課題は、案外そこかもしれない(笑)










