
唎酒師(ききさけし)の勉強を始めてから、最近はお酒をちょっとセーブしている……
はずだった。
でも、ふと気づくと、テーブルの上には4合瓶が1本。
しっかりと鎮座していた(笑)
酒売り場が宝島に変わっていた
夕方。
食事の買い出しにイオンへ行ったのが物語の始まりだった。
野菜とお肉を手に取るはずが、なぜか足は自然と日本酒コーナーへ。
まるで引き寄せられるように。いや、たぶん実際に引き寄せられてた。

棚に並んだ酒瓶を前に、僕の脳内では早くも唎酒師モードがフル稼働していた。
「お、このお酒、精米歩合50%だから“大吟醸”なのか」
「こっちは吟醸も純米も書いてない…味の傾向、読めるかな?」
テキストで学んだ知識が、リアルなラベルの世界で立体的に動き始める。
もう、楽しすぎて時間を忘れてた。
その瓶は、ぽつんと僕を待っていた。
ふと目に止まったのは、ひときわ静かなたたずまいの一本。
「イオン限定酒」の文字。そしてそのラベルには──

彩(さい) の一文字。
……これは、まさかの「蓬莱泉」じゃないか。
一瞬、心臓がドクンとした。

愛知の誇る酒蔵・関谷醸造のお酒だ。
「空」「美」「和」「可。(べし)」など、漢字一文字で知られる名作シリーズに、
また新たな仲間が加わったようだ。
帰ってから調べても、公式HPにすら載ってない。
ほんとにイオンでしか買えないやつっぽい。
つまり──見つけてしまった、ってこと。幻の一本をね。
おかえり、僕のテイスティングナイト。

化粧箱から「彩」を取り出すと、瓶の美しさにまず息をのむ。
中央に大きく描かれた“彩”の文字。シンプルなのに、強い。ラベルコレクション決定だね。
テキスト片手にラベルを確認する。

原材料は米と米麹のみ。精米歩合は55%。
純米吟醸に間違いない。

この数字が、味の繊細さや香りの高さにつながる。
知識があると、ラベルが「読むもの」になる。
ただの飾りじゃなくて、お酒の履歴書になるんだ。
グラスに注ぐ。

透明な液体……と思いきや、ほんのりと黄色がかっている。
これがまた、美味しそうでたまらない。
香りをそっと確かめると──
……バナナ。

熟した果実のような、ふわっと甘くて深い香り。
しばらく嗅いでいたくなるくらい、官能的だ。
一口。
口の中でふわっと広がる吟醸香。
これが……これが「純米吟醸」か。なるほど、勉強通りだ。
晩ごはんは、豚肉炒め。

本来なら、こういうすっきり香り高い系のお酒はお刺身に合うと言われてる。
でも今日の晩ごはんは、がっつり豚肉と野菜の炒め物。
香ばしさも、甘辛さもある。
合わないかな……?と思いきや、むしろ相性バッチリだった。
日本酒の面白さは、こういう予定調和じゃない組み合わせにも寄り添えるところ。

今あるごはんに合わせてくれる懐の深さ。
これがたまらないんだよなあ。
あ、ちなみに今日の日本酒うんちくは、
ぜーんぶ唎酒師のテキストの受け売りです(笑)
熟成レーズンチョコと「彩」の禁断のマリアージュ。

そして、どうしても試したかった組み合わせがある。
2月に買って、ずっと熟成させてたアレ。
2ヶ月半。冷暗所でじっくり育ててきた。
レーズンの角が取れて、甘みがまろやかになってきたころだ。

彩と一緒に口に含む。
おおっ…これは…!
すっきりとした吟醸の香りが、チョコの甘さとふわっと調和する。
味が深まった薫製レーズンの余韻に、日本酒の軽やかさがそっと寄りそってくる。
吟醸はスイーツとも合う。
まさにテキスト通り。でも、それを自分の舌で実感する感動は、何倍も違う。
一つの発見が、僕の中でまた火を灯した。
今日のところは、ここまで。
テキストを読み進めるのも大事だけど、
味わうことでしか学べないことが、たしかにある。

唎酒師の勉強は、“飲むこと”から逃げちゃいけないのかもしれない。
今夜はゆっくりと、この一杯の世界を楽しもう。
また明日から、楽しい日本酒の探求が始まる。










