どうしても上手く描けない。
僕は初めて、筆ペンを机に置いた。
その瞬間、ドラゴンの炎に焼き尽くされた。
意気揚々と喫茶はじまりへ
毎月第2、3金曜日に開かれる己書の幸座(講座)。今日は、都合により木曜日。僕は、意気揚々と幸座が開かれる大曽根商店街の「喫茶はじまり」へ向かった。
ここ最近、コツをつかんできたようで、思うような字が書けてきている。
この感覚をさらに進めて自分のものとしたい。そんな決意で今日の幸座に臨んでいた。
“総師範の龍”というボスキャラ
先生から出されたのは、龍を描くお題。
なんと、己書の杉浦総師範が描いたものを用意してくれていた。窓のような小さな円の中、ダイナミックに躍動する龍の姿があった。
「えっ?こんなカッコいいの僕に描けるの?」
第一印象は、難しそうとか、敷居の高さというか、畏れ多いというか。でも、「教え上手の先生だし、なんとかなるっしょ」という感じでスタートした。
まずは、丸を描く。筆ペンをハガキに押し付けてグルッと。
ここまではなんの問題もなかった。
羽子板?とうもろこし?(いや龍)

次は、龍を鉛筆で下書きする。
これが難しい。というか、龍に見えない。
羽子板?とうもろこし?
ゴツゴツとした顔つきから、鋭い眼光を立体的に描き出さないといけない。龍って意外と難しい。
描いては消し、描いては消し。
龍ってどんな顔の構造をしてるんだろ?手で龍の形を作ってみて、模写してみたり。
4枚のお題の中から、1枚とりあえず描いてみた。
名付けて「ハゴイタドラゴン」。レベル1でも倒せます。
ここまでで1時間。
幸座の2時間では到底時間が足りない。
2枚目で沼に沈む
2枚目に取り掛かった。
流し目でこちらを見る龍の顔。龍の絵としてはよくある構図だった。
なんだろ、全くダメだった。
どう描いても、龍の顔にならない。
お手本はざっくりなように見えるのに、その実、斜めに傾いた龍の顔が正確に描かれてるんだ。
龍の目ってどういう感じについてるんだろう?鼻って馬のような感じなのかな?顔の長さって、意外と短いのかも。
お手本をそのまま写せばいいだけの話。
でもね、それが全然できない。
描けば描くほど深みにハマっていくようで、龍の顔がよく分からなくなってくる。

消しゴムのカスが、ハガキの上に雪みたいに積もっていった。
いつも一緒に幸座を受けている方が、「腕組みしたまま、全然動かんかったねぇ」と驚くほどだった。
結局、ここでタイムアップ。1枚しか描けなかった。
“適当”に見える本気
先生はこんなことを教えてくれた。
「総師範は適当に書いてるように見えて、実はすごい細かく書いてるんですよ」
ざっくり適当に描いてるように見えた。でもね、全然違ってたんだよ。そりゃ、総師範の描く龍だ。魂がこもっている。
流し目の龍がこちらを見て、こう言ったようだった。
「這い上がってこい。…逃げるなよ?」と。

描けないんじゃない、まだ見えてない
描けなかったというよりも、まだ見えてなかった。
僕は龍という存在を、はるか遠くに感じていただけかもしれない。
目をつぶってでも龍が描けるように。
練習の目星はついている。
龍の絵はネットを探せばいくらでも出てくる。そいつらを片っ端から模写してやる。目標は、100の龍を倒すこと。
次の幸座で、先生が驚くような龍を描けるように練習してやる。
楽しいよね。伸び代があるって。ワクワクするよね。
龍が楽勝で描けるようになれば、他のものも簡単に描けそうな気がしてる。






