ブリューパブ大曽根が帰ってきた|壁の絵に感じた街の奥行き

ブリューパブ大曽根が改装中だった4月、僕の週末はかなり寂しかった。

土日に休みがあると、ここに行きたいから走る。ランニングして汗を流して、昼からビールを飲む。それが僕の華やかな週末だった。

ところが、改装中はそうもいかない。せっかく週末が休みでも、どこへ行くわけでもなく、なんとなく栄や名駅をブラブラする。

そんな週末が繰り返されていた。

そして5月15日の金曜日。

ブリューパブ大曽根が、ついにリニューアルオープンした。

その2日後の日曜。僕はウキウキした気分を抑えきれず、大曽根商店街へ向かっていた。

これでようやく、堂々と昼から呑んだくれる(笑)

僕の華やかな週末が帰ってくる。

そう思うと、いてもたってもいられなかった。

蚊取り線香の匂いは、ビールの合図

お店の前に着くと、ドアの外に蚊取り線香が置かれていた。

その匂いが鼻に入った瞬間、僕の中でスイッチが入る。

この匂いは、夏の合図。そして僕にとっては、「美味しいビールが待っている」という合図でもある。

ドアを開ける。

店内に入ると、拍子抜けするほどいつも通りだった。

L字型のカウンター。そのまわりに並ぶテーブル席。カウンターが長く取られているから、一人で来ても肩身の狭い思いをしない。

開店直後の1時半だというのに、席は半分以上が埋まっていた。

肉を焼く匂い。活気のある店内。

あぁ、帰ってきたな。

変わっていないと思ったら、壁が変わっていた

基本的には、座席は変わっていなかった。

テイクアウト用のビンを入れる冷蔵庫が大きくなったと教えてもらった。たぶん、奥にある醸造施設も変わっているのだろう。

つまり、見えるところはほとんど変わっていない。

そう思っていた。壁を見るまでは。

改装中、お店の前を通るたびに、何やら描いているのは気づいていた。極彩色で、見ているだけで元気が出そうな何か。

それが何なのか、ゆっくり観てみたいと思っていた。

ビールを持ったおじさん、これ僕なんちゃう?

壁には、原色が広がっていた。

その上から、黒い線で描かれたおじさん。ビールを片手に、満面の笑みを浮かべている。これって僕なんちゃう(笑)

そんなことを思いながら、しばらく眺めていた。

すごいのは、色の使い方だった。普通、こういう絵って、顔の途中で色を切り替えたりしないと思う。

顔は顔として、なんとなくまとまりよく塗りたくなる。

ところがこの絵は、顔のど真ん中でもお構いなしに、ピンクと緑が切り替わっている。

このセンス、僕にはなかったな。

今度、己書で試してみようか。

ビールを飲みながら、壁の絵を眺める

いつものように、廊下側のカウンターに座る。

1杯目に頼むのは、たいてい「POP EYES」

トロピカルな味で人気のヘイジーIPAというカテゴリーながら、甘みは控えめ。それでいて爽やかさが強調されている。

初夏の季節にふさわしいビール。いや、いつ飲んでも美味しいかな(笑)

お次は「KENZO IPA」

深み、旨み、爽やかさ、ビールらしさ。そういうものが全部詰まっているようなビールだ。

美味しいビールを飲みながら、壁の絵を眺める。

正気を保てる時間はあとわずか(笑)

一気に結末へ向かってしまおう。

上手く描くより、心が伸び伸びしているか

お店の方に、壁の絵について聞いてみた。

近所の障害者施設の方が描いてくれたそうだ。

なるほど。

想像もつかないような大胆な色づかい。楽しさがあふれだすような、伸び伸びとした絵柄。

お店の方は「違った感覚がありますよね」と話してくれた。

その言葉が、妙に残った。

違った感覚。

絵って、つい「キレイに描かなきゃ」と思ってしまう。

僕も己書をやっているから、余計にそう思う。けれど、心が縮こまってビビって描いた絵なんて、きっと誰も観たくない。

大事なのは、上手く描くことより、心が伸び伸びしているかどうか。

素人でも、思いっきり楽しんで描けば、心を打つものが出てくる。

そんなことを、ビールを飲みながら思った。

大曽根の奥行きが、壁に描かれていた

障害者だからとか、健常者だからとか。

そういう言葉よりも先に、色が飛び込んでくる。背景よりも先に、楽しさが伝わってくる。それって、すごくいい。

いろんな背景を持つ人が、街の中で自然に力を発揮している。

ブリューパブ大曽根の壁には、そんな大曽根の奥行きが描かれていた。ビールのように、じわじわ深い。

大曽根の週末が、ようやく帰ってきた。

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