
もっと、もっと、上手くなりたい。
己書の幸座(講座)を2度経験して、胸の奥に小さな火が灯った。
その火は、じわじわと熱を増している。
前回の幸座では、人生で初めて水彩画に挑戦した。
筆で描くなんて、中学校の美術の授業以来。
いや〜難しかったよ。
水の動きに翻弄されながら、色に感情を乗せていく。
にじみ、ムラ、意図しない広がり…。
全てが、思い通りにならない。
だからこそ、面白かった。
水彩との出会い──色と感情が混ざり合う2時間

たった2時間じゃ、水彩画の“呼吸”なんてつかめない。
水は自由で、気まぐれで、繊細だ。
こちらが力んだ瞬間、すぐに機嫌を損ねてしまう。
あの日描いたネコも、三毛なのか水たまりなのか、最後まで判断できなかった(笑)
でも、不思議なもので。
終わったあとに感じたのは、恥ずかしさよりも「楽しかった」のほうだった。
やりたい気持ちは技術よりも大切なのかな

先生の幸座は月に2回。
とても丁寧で、やさしくて、気づきが多い。
けれど、このペースでは上達していけるのかちょっと不安。
もっと描きたい。
もっと、あの不器用な線に、命を吹き込みたい。
どうせ始めたなら、ただの趣味で終わらせたくない。
ちょっとくらい自信を持てる作品を描いてみたい。
できることなら、誰かが「いいね」って思ってくれるような──僕らしいパンチが効いた作品を。
自分らしさって、なんだろう?

自分らしさって、何だろう。
そんな問いが、ふと心をよぎる。
でも今はまだ、それを探す前の準備運動の段階。
まずは、先生が出してくれたお題を、全力で描く。
それが、きっと、自分の輪郭を見つける近道なんだと思う。
世界堂へ。アーティスト気取りで、今日は本気

そんな気持ちを胸に、僕は矢場町に降り立った。
梅雨の晴れ間。
空はギラギラとまぶしくて、空気はむっとするほど蒸し暑い。
汗がにじむシャツを気にしながら、僕はパルコ南館のエスカレーターに乗り込んだ。
目指すは8階。
僕の“心の秘密基地”──画材店の世界堂だ。
ホルベイン24色と、未来のネコたち

画材なんて、無縁で生きてきた。
けれど僕は、ボールペンが必要だとかっこつけてこのお店で買っている。
絵なんて描いたこともないのに、アーティスト気取りでね(笑)
でも今日は正真正銘、己書アーティストの端っことして、この場所にやってきた。
だって僕、もう8枚も己書を描いたんだよ?たった8枚と言うべきかな(笑)
棚に並ぶ絵の具たち。
その中で、ひときわ目を引いたのが──ホルベインの水彩絵の具・24色セット。

先生も使ってると教えてくれたもの。
これを使えば、あの繊細なにじみを、僕も再現できるかもしれない。
さらに、筆は4本。細〜大までフルラインナップ。
絵の具を入れるアルミパレットも、ちゃんとゲット。
いわば、僕の“己書キット”の完成だ。

描く準備、整いました。

お店を出て公園で、絵の具の箱をそっと開けてみた。
ネイビーのチューブを手に取る。
深みのある藍色が、まるで空を切り取ったみたいに感じた。

この色で何を描こう。あのにじみで、どんな物語が生まれるだろう。
胸がドキドキする。
まるで遠足前夜の小学生みたいに。





