先生は、僕の弱点を見抜いていた。
だから、僕専用のお題が用意されていた。
そして今日は、うまく書けたかどうかよりも先に――レベルが上がる予感がしていた。
金曜恒例、己書の時間
毎月第2、第3金曜日は己書の日。
幸座(講座)が開かれる大曽根商店街の「喫茶はじまり」へと向かった。
前回の幸座で、「余白を描く」という意識を先生から学んだ。文字を大きく書きすぎる癖が、なんとなく解消されていくような感じがしたんだよね。
お題は僕専用

今回の幸座では、美しい余白を目指して書いてみる。
先生が用意してくれたのは、男性の師範が書いたというお題。ダイナミックに書きがちな僕に合わせて、力強さを感じるお題を特別に用意してくれていた。
画面いっぱいに並ぶ絵と文字は僕好み。
さすが先生、全てお見通しなんですね。
きれいに収まる。でも、生きてこない

さて、実際に書いてみた。
文字がキレイに収まりはした。
ただ、なんとなく弱っちいというか、己書らしくない。
僕の作品は、ただ単に「字を書きました」っていうイメージがする。
整ってはいる。でも、静かすぎる。
己書は「字」じゃなくて「生き方」
己書って、力強かったり、丸っこかったり、時に角ばったり、それでいて柔らかで優しい文字。
自分の人生観、つまり「こんなふうに生きてみたい」という感情を表現する文字なんだと思う。
つまり、己書は字じゃなくて生き方そのもの。
天の声…いや、先生の一言
何が足りないのか?
考えていると、天から、いや先生の声がした。
「太いところと細いところをしっかり出すと、文字は大きく見えるんですよ」
なるほど。
自分の作品を見てみると、ほとんど同じような太さの文字が並んでいる。
力強さも優しさも柔らかさも何も感じられない、ただの文字。これでは「己の心を写してはいない」と。
僕が己書で表現したいのは、湧き上がるような命のエネルギー。その中に、優しさや柔らかさを出してみたい。
直せるのが、己書の強さ

そこで、筆ペンを取って、修正をしてみた。
己書は書いた文字を後から修正してもOK。きれいに修正するのもテクニックの一つなんだとか。
大胆にメリハリをつけてみた。
太くする部分は、思い切って筆ペンをベタっと押し付けて書いてみる。
そして、柔らかな曲線を見せたい部分は丸っこく。文字をどう見せたいかを思い浮かべながら修正してみた。
大きさじゃない。メリハリだ
修正し終えた作品を見てみる。
前とは全然違ったね。
先生の言うとおり、小さい文字ながら、ハガキからはみ出てくるような生命力が宿ったような気がしてくる。
文字の大きさで力強さを示すのではなかったんだね。つまり、太さ細さ、大小の違いによって力強さはコントロールできるんだ。
ここで理解できた。
メリハリをコントロールできるようにしよう。そうすれば、大きく書いてしまう癖は完全に消えていくはずである。
また一つ、成長できたかな。
六級証書、レベルアップ!

そんなことを考えていると、先生が一枚の紙を出してくれた。
……え、これ、もしかして。
頭の中で、あのレベルアップの音が鳴った。
テレレレッ♪ KOKIXは 六級の証書を てにいれた!KOKIXの 己書レベルが 1あがった!
幸座に12回通うといただけるとのこと。
階段を上っていけ

たぶん、最初の最初、階段の一段目を上っただけ。でも、うれしかった。
毎回、気づきをくれる先生には感謝しかない。また次回、どんな成長が待っているのか。
五級を目指して、己書の階段を上っていこうと決意した。
次の幸座も、きっとレベルアップの音が鳴る。
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