
春が来た。僕の中の探偵スイッチが入る。
暖かな風が吹き抜けると、毎年決まって胸がざわつく。これはきっと、「謎の気配」だ。
僕の中の探偵魂が目を覚ます。
今年もまた、明治村の謎解きの季節がやってきた──。
いざ、明治村へ。僕は探偵として「事件現場」に立つ。

今年のタイトルは 「江戸川乱歩と不可解な残像〜黄昏の新聞社〜」。もう面白そうな香りがプンプンする。
謎解きはレベル0〜5までの6段階。レベル0〜3は、3月から7月までの全期間開催。レベル4と5は、ゴールデンウィーク明けからスタートする仕組みだ。


「さあ、今年も悩みに悩ませてくれる激熱バトルが始まる……!」
受け付けでレベル1のキットを購入し、僕は覚悟を決めた。
序盤から、まさかの大苦戦。

風は強いが、空は快晴。歩きまわって暑くなるから、周りの山から吹きおろす風が意外と気持ちいい。
まさに謎解き日和。
キットを開き、最初のページの謎を解く。
解けば行き先が分かり、その場所へ向かうことで新たな手がかりが手に入る。
これを繰り返しながら、最終的な答えを導き出すのが、このゲームのルールだ。
だが──。
「え、待って……レベル1なのに全然解けないんだけど??」

いやいや、明治村での謎解き15年のキャリアを誇る僕が、こんな初級問題でつまずくはずがない。
でも……時間だけが過ぎていく。
まさか、今年はレベル1すらクリアできないのか……?
冷や汗がにじむ。いや、ただの春の日差しのせいか?
謎解きに行き詰まったら、甘いもので脳を回せ。

人が考えた謎なら、必ず解けるはず。
焦っちゃダメ。
……そうだ、リラックスが必要だ。
そんなときは、カフェへと足を運び、長考モードに入ろう。
ケーキを注文し、しばし思考の整理タイム。
ふんわりやわらかなスポンジケーキ、ホイップクリームの甘さが、脳内にエネルギーを供給する。

「えっ、もしかして、ダミーに引っかかった?」「あれ、どっかで手順間違えた?」「いや、資料をもっと深く読み解こう」
ケーキの甘さとコーヒーの苦みが、僕の思考を研ぎ澄ます。
そして──
「……わかった!この線とこの線が関連してるのか、そういうことか!!」
再び現場へ。気づけば梅の香りが漂っていた。

その後は怒涛の展開だった。最後の答えがある地点へと、意気揚々と歩いていく。
だが、ふと気がついた。
「西日が美しすぎる…」
夢中になりすぎて、何も目に入っていなかった。
答えを手にし、ふと周囲を見渡すと、満開の梅が目に飛び込んできた。

「こんなにキレイだったのか……」
さっき、同じ道を通ったはずなのに、その時は全く気づかなかった。
謎解きの余韻とともに景色を愛でる贅沢。これこそ、明治村の謎解きの真髄なのかもしれない。
ギリギリのタイムリミット。そして勝利の証。
14時にスタートし、気づけばもうタイムリミットの16時半。
受け付けへ駆け込み、答えを提出する。
スタッフが答えを確認し──
「おめでとうございます!クリアです!」

その瞬間、思わずガッツポーズ。
「やった……!!!」
初級のレベル1といえども強敵だった。
手渡されたのは、クリアの証となるステッカー。この達成感、15年たっても全く色あせることはない。
「また来るぜ、明治村。次の謎が僕を待っている」
今年の謎解きは、まだ始まったばかり。
レベル1がギリギリだったことを思うと、さらなる強敵が待ち受けているのは間違いない。
「さて……次はどんな事件が待ち受けているのか?」
探偵魂を燃え上がらせながら、僕は明治村を後にした。










