
背中の痛みも、ついに最終章。
ランニングができないことを除けば、ほぼ普通の生活に戻れている。
だけど、治るのを待つだけの日々というのも、なんだかモヤモヤする。
「今、できることはないのか?」
そう自問してみた結果、ひとつだけ思い当たった。
神頼みしかないじゃん。
大曽根には、平安時代の陰陽師・安倍晴明を祀る「晴明神社」がある。
悪霊退散で名を馳せた彼なら、背中に巣食う痛みの元凶も追い払ってくれるに違いない。
冬の冷たい風が肌を刺す。
僕は分厚い雲が垂れ込める空の下、晴明神社へと向かった。
冬の神社、異世界への入り口

晴明神社はバンテリンドームの裏手、急斜面の上にひっそりと建つ小さな神社。
急な階段を上るたびに、凝縮された歴史の趣(おもむき)を感じる。

15メートル四方ほどの敷地の奥に正殿が祀られ、所狭しと鳥居、手水(ちょうず)、社務所、休憩所が並んでいた。
境内に足を踏み入れると、目に飛び込むのは星形の紋様。
五芒星(ごぼうせい)があちこちに描かれていて、そこだけ時間が止まったような異世界の雰囲気を醸し出している。
そして、僕のお目当てはここに鎮座する「狛犬(こまいぬ)」。
男性は左の狛犬、女性は右の狛犬をなでると悪い箇所が良くなるという言い伝えがある。
狛犬に祈りを込めて

さっそく100円玉を賽銭箱に投入し、いざ狛犬へ。
「背中痛、頼むから消えてくれ!」と心で叫びながら、左の狛犬の背中を「これでもか!」と石が削れるほど念入りになでまわした。
石肌は長年の祈りを受けてか、少し滑らかに感じる。

なでているうちに、ふと頭をよぎった「狛犬さん、これ嫌がってないかな?」と…
狛犬さん、なでまわしてごめんね。
でも、背中痛を追い払うにはこれくらい全力で祈らないと!
お守り選びで迷う僕

さらにご利益を得るべく、社務所でお守りも授かった。
晴明神社のお守りは「神符(しんぷ)」という特別なお札で、肌身離さず持っているとご利益があるとのこと。
13種類もあって「どれを選べば効くのか?」と頭を抱えた僕に、神社の方がやさしくアドバイスをくれた。
「背中のケガなら、厄除けがいいんじゃないでしょうか」
いくつか厄除けのお札をおすすめしてもらった僕の気持ちは、「宿曜主神主符(すくようしゅしんしんぷ)」にヒットした。
何かの言葉が書かれているお札が多い中、このお札は摩訶不思議な幾何学模様が悪霊を寄せつけない雰囲気を感じさせて、一番カッコよかったんだ。
「これだ!」と即決。
ありがたくお札を授かり、カバンのポケットに滑りこませた。
雲が切れ、光が射す

お参りを終え空を見上げると、覆っていた雲がゆっくりと切れ始め、日の光が柱のように地面へ降り注いだ。
「僕の祈りが天に通じたのかも?」なんてね。
ポジティブな思いがわきあがる。
河川敷を爽快に駆け抜ける日は、近い。
その時が来たら再びこの地を訪れて、狛犬さんに何か奉納しようと誓い、僕は晴明神社を後にした。





