
名古屋シティマラソンを終えた翌日。疲れは残っていたが、心は晴れ晴れ。
「ああ、走り切ったなぁ……」
それと同時に湧いてきたのは、ある強烈な衝動。
「この気分のまま、どこか気持ちのいい場所へ行きたい!」

ただ休むだけじゃもったいない。
ふと頭に浮かんだのが山田天満宮の「梅まつり」だった。
山田天満宮へ。梅の香りが迎えてくれた。

天満宮に近づくにつれ、何かがふわっと鼻をくすぐる。
甘く、どこか酸っぱい透き通るような香り。
「あぁ春だな…」
目を向けると、白やピンクの梅の花が、まるで春の雲みたいにふんわりと枝を包み込んでいる。

空はどこまでも澄み渡り、風はそよそよとやさしく吹いている。
昨日までの「走るぞ!」のテンションとは真逆の、おだやかで心地よい空気。
まるで体のスイッチが「闘争モード」から「癒しモード」に切り替わった瞬間だった。
天満宮と梅の深い関係。なるほど、これは必然だった。

境内に入って、あらためて気づいたことがある。
「あれ? 山田天満宮って、こんなに梅の木があったっけ?」
数えてみたら70本ほどの梅の木が植っていた。
天満宮と梅は切っても切れない関係にある。
というのも、ご本尊の菅原道真公は、生涯を通じて梅をこよなく愛した人。

「東風(こち)吹かば、にほひをこせよ、梅の花、あるじなしとて、春な忘れそ」
これは道真公が詠んだ歌の一節。
「東風が吹いたら、梅よ、その香りを届けてくれ。私がいなくても、春を忘れるなよ」
この歌、すごくロマンチックじゃない?
それが理由で、全国の天満宮では梅が植えられているわけか。
山田天満宮が梅でいっぱいなのも、なるほど納得。
金運さえあれば、他はなんとかなりそうだからね(笑)
「梅まつり」といっても、特に大掛かりなイベントがあるわけではない。
ただ純粋に、満開の梅の花を愛でて楽しむ。
……と思いきや、併設の「金(こがね)神社」には長蛇の列!
梅より金にひかれる気持ち、めっちゃ分かる(笑)。
「金運ってやっぱり魅力的だよね。たいていのことは何とかなるもんな……」
そんなことを思いながら、梅の花を堪能することにした。
梅の花に包まれる時間。心の奥からふわっと軽くなる。

境内をゆっくり歩く。
白、ピンク、紅色の梅が、それぞれの個性を主張しながら咲き乱れている。

小鳥が枝にとまり、楽しげにさえずる。
目の前で、梅の花びらがふわりと舞い落ちる。

その瞬間、不思議な感覚が体を満たした。
「あれ? 俺、ちょっと小鳥になった気がする……?」
体がふわっと軽くなるような、妙な感覚。
ランニングの疲れなんて、もうどこかへ消え去っていた。
「叶う守」を手に、梅の力をもらう。
せっかくだから、梅にちなんだものを授かって帰ろう。
社務所で尋ねてみると、特別な「梅のお守り」はないそうだ。その代わり、梅の花の模様があしらわれたお守りをおすすめしてくれた。
いくつかある中から「叶う守」をセレクト。

「何でも叶う」って、すごいパワーだな!(笑)
迷わずゲット。
梅の花に見守られながら、このお守りを手にして思う。
「名古屋シティマラソンを走り切った俺なら、何でも叶う気がする」
ハーフマラソンも一つの山だけど、こうして走り終えてみると、次の山にも挑戦したくなる。
最初は僕も、3キロ走るのに「ヒーヒー」言っていた。小さなことをコツコツとクリアしてけば、いつか大きな山の頂に立てるんだ!なんてね。
マラソンの後の最高のご褒美時間。

走ることは最高だ。
でも、その後にこうして「心のご褒美時間」を作るのも、最高だ。
梅の香りに包まれ、のんびり歩きながら思う。
来年も、走った後にここへ来よう。
「またこの梅の香りに包まれるために、俺は来年も走るのだ」
春の暖かな風に吹かれながら、僕は山田天満宮を後にした。










