焼き芋を求めて、走る。それだけでいい。

焼き芋が俺を呼んでいる。こんなこと、人生でそう何度もない。

朝、カーテンを開けると、スカッと晴れた青空。

「お、今日は走れるな…」とはならないのが、怠惰な僕である。

本来ならこのまま布団にダイブして、二度寝に突入するのが定番コースだ。

でも、今日は気合がみなぎっていた。

なぜなら—— 焼き芋のために走るからだ。

2日前、何気なく走った道で見つけた「焼き芋屋さん」。

真っ赤な看板に吸い寄せられるように駆け寄ったものの、財布を持っておらず、悔し涙を飲んだあの日…。

そのリベンジを果たすために、今ここにいる!

…と、まあ、焼き芋への執着心はすでにトップギアだが、一応「ランニング」という大義名分もあるので、気持ちよくスタートを切る。

青空とそよ風、ランニングびよりの贅沢

寒波がやわらぎ、ほんのり春の気配が混じっている。

風は穏やかで、頬をなでるそよ風がちょうどいい。

矢田川の河川敷を進む足取りも、今日は軽い。

ランニングで温まった体を、そよ風が心地よく冷やしてくれる。

「これだよ、これ。冬ランはこうでなくちゃ!」

そんなことを思いながら、いつもの道を駆け抜ける。

目的地は、香流川に入って1.5キロほど走った「新屋敷橋」手前の あの「焼き芋屋さん」 だ。

ついに、赤色の看板が…!

住宅地の中に、赤色で書かれた「やきいも」の文字が目に飛び込んできた。

——あった!

まるで砂漠でオアシスを見つけた旅人のように、僕は吸い寄せられるように駆け寄った。

焼き芋屋さんは 「丸萬建設」という工務店の敷地のコンテナ店舗 にある。

前回は指をくわえてながめるだけだったが、今日はちゃんと 財布を持っている!(ここ大事)

コンテナは普段は無人で、お客さんが来ると工務店の呼び鈴を押して、店員さんを呼ぶというシステムだ。

工務店の玄関前で、そっと呼び鈴を押す。

…この瞬間、ちょっとした「秘密の裏口」感があるのが、またいい。

「すみません、焼き芋が欲しいんですけど」

そう声をかけると、中から爽やかなお兄さんがあらわれ、コンテナへと案内してくれた。

焼き芋との出会い

コンテナの中は、駄菓子屋になっていた。

子どもたちが喜びそうな、小さくて懐かしいお菓子がぎっしりと並んでいる。

その奥に、焼き芋を温める機械が鎮座していた。

「どれがいいですか?」

店員さんが、スタンバイしてある焼き芋を見せてくれる。

どれも蜜があふれ出していて、赤茶色の焼き芋を見た瞬間に 甘さたっぷりの黄金色の断面 が想像できた。

ランニング中なので、今回は 一番小さいサイズ をチョイス。

重さを計ると 190g 。1グラム1円だから190円

小銭がチャリチャリしないように、5円のラムネを2つ追加して ジャスト200円

この「計算された支払い」が、地味に気持ちいい。

新聞紙で包まれた焼き芋を手渡されると、ほんのり温かく、手にじんわりと 「冬の優しさ」 が伝わってくる。

なぜ駄菓子屋さんを?

なぜ工務店が駄菓子屋さんをやってるのか、店員さんに聞いてみた。

最初はコンテナでDIY教室をやっていたのだが、地元の人との付き合いを大切にしたくて駄菓子屋にしたとのこと。

素晴らしいね!もし僕が家を建てるなら、ここの工務店でお願いしたいと思ったよ。

工務店経営の駄菓子屋なので、現場作業が増えると店員さんも現場に行くのでお休みになるそうだ。

焼き芋を、食す。

ランニングコースに戻り、川沿いに腰を下ろす。

新聞紙をめくると、ふわっと 香ばしい甘い香り が鼻をくすぐる。

「…この新聞紙をめくった瞬間、世界が変わる!」

勢いよくかぶりつくと、口の中に ホクホク感としっとり感が共存する極上の甘み が広がる。

飲み物なしでもパサつかず、クリーミーで喉をスルリと通る。

ほんのり蜜の甘みが口の中に残り、もう一口、また一口と止まらなくなる。

青空の下、そよ風と川の流れを楽しみながら食べる焼き芋。

190円でこれ以上の贅沢は、この世界に存在しないだろう。

焼き芋の甘さを力に、再び走る

甘さが体に染み渡り、エネルギーがチャージされる。

「よし、元気100倍!」

再び足を動かし、今日も 2時間の「お気楽ラン」 を満喫する。

ランニングは発見の連続。

矢田川から香流川を走る いつもの道 に、こんな素敵な場所があったなんて。

次はどこを走ろうか?

どんな発見が待っているのか?

焼き芋の甘さとエネルギーを燃料に、足が自然と前へ出る。

走るたびに風が心地よく吹き抜ける。

さあ、今日はどこまで行こう?

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